研究内容の紹介
 所用洗剤や 洗濯用粉末洗剤の成分表示をちょっと見てください.必ず「界面活性剤」というものが入っているはずです.洗剤の汚れを落とす働きは主に界面活性剤が担っているのです. 界面活性剤はパーム油・ヤシ油などの植物油脂,牛脂などの動物油脂,あるいは石油を原料とする化学製品で,用途に応じて様々な性質をもった製品が開発・製造され ています.私達の研究室では,これら界面活性剤を水に溶かして溶液にした際に現れる色々な性質について調べています.シャボン玉のような薄い液体膜が形成する機構,洗剤溶液の泡立ち易さ,界面活性剤分子が溶液内でつくるミクロな分子集合体(ミセル)の構造等 々……身近に見られる現象から基礎科学の世界まで,幅広い視野にたって研究を進めています.

 
面活性剤は分子内に水と仲が良い部分(親水基)と仲が悪い部分(疎水基)を持っており,この種の物質は「両親媒性物質」と総称されます.水と油の両方と馴染むことができるので,両親媒性物質は水と油を仲立ちし,水と油を混ぜ合わせる働きがありま す.私たちの身の回りの洗剤・柔軟剤・乳化剤はそうした性質を上手く使って作られているのです.

 
ころで,私たちの体を作っている細胞は主としてリン脂質からできている生体膜と呼ばれる膜によって外界と仕切られています.リン脂質分子も両親媒性の物質で親水基と疎水基をあわせ持っており,そのため水中で は親水基を水の方に向けて寄り集まり,膜(2分子膜)になるのです.生体膜は外界と細胞内部との仕切りの役割を果たすと共に,いろいろな蛋白質をその中に保持して様々な生理機能を果 たします.これは膜内のリン脂質分子は膜中で絶えず動き回ることができ,融通がきく柔らかい構造をしていることに拠ります. このようなリン脂質膜に関する研究も進めています.


両親媒性物質とは?
⇒ 水になじみ易い部分(親水基)と,なじみ難い部分(疎水性基)をあわせもった物質群 
両親媒性分子の模式図
  青丸部分が親水性基で,ジグザクは
  疎水性基(アルキル鎖)を表している

      
                            



 1本鎖のもの:
  界面活性剤(セッケン,洗剤など)

 2本鎖のもの:
  脂質(生体膜,柔軟剤など)


                          
  
両親媒性物質が水中で形成する分子集合体

1本鎖の界面活性剤はある濃度(臨界ミセル濃度)以上になると会 合してミセルと呼ばれる分子集合体を形成する.多くの場合,ミセルは下図のように球状で,表面は親水基で覆われ,中身はアルキル鎖が詰まっている                          




 一方,2本鎖の脂質系が形成する分子集合体は2次元的 に広がった膜状になる(下左図参照).このような膜が袋状になって小胞体を形成する(下右図).これをベシクルあるいはリポソームと呼ぶ.
    
   
                                 
                            


  


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