日本自生のマタタビ属植物の概要
(サルナシ,シマサルナシ,マタタビ)

片岡研究室/果樹園芸学
香川大学農学部 All rights reserved

■ サルナシ(A.arguta)
AB
A:月山系統(六倍体)の果実,B:長野系統(四倍体)の雌花(みかけの両性花)

【自生分布】サルナシは,中国,朝鮮半島,ロシア東部など東アジアに広域に自生分布しています.日本では,北海道から九州まで全国に自生分布しています.九州や四国では,1000m前後の標高の高いところに生育していますが,北海道では平野部でも見られます.耐寒性が強くマイナス30℃にも耐えられるとされ,欧米では耐寒性の強いことを意味するハーディーキウイ(hardy kiwi)などと呼ばれています.しかし休眠覚醒に必要な低温要求量そのものは比較的少ないようです.

【花】花は,冷涼地では6月中下旬に開花しますが,本研究室の圃場(香川県三木町)では5月中旬に開花します.花径は2〜3cmで,花弁は白色,葯は黒色(二倍体,四倍体)または黒褐色(六倍体)で,子房は緑色無毛です.花柱は放射状に開きます.雄株の花の子房は退化しています

【授粉】雌雄異株のため,結実させるためには,雄個体(品種・系統)の花粉を雌個体(品種・系統)に授粉する必要があります.雌個体の花も見かけ上多くの葯をもっており花粉も出ますが,発芽力は全くありません.デリシオサ種のキウイフルーツの雄品種(マツアやトムリなど)もサルナシと和合性があり,問題なく結実させることができます.サルナシの品種の中には,授粉しなくても結実するものがあります.「一才」,「エルダー」,「インパル」などの7倍性の品種は,単為結果性をもっているため,雄花粉の授粉なしでも30%程度は結実します.ただし,果実は種なしとなるため,大きさは雄花粉を授粉した場合に比べて小さくなります.

【果実】果実は5g〜20gで,果面は緑色無毛,果肉は淡緑色で,放射状に種子が入っています.果実当たりの種子数は10〜150個と品種系統により異なります.果実の可溶性固形物含量(いわゆる糖度)は15〜20%,滴定酸含量は2%前後です.アスコルビン酸(ビタミンC)を50〜300mg/100g果肉新鮮重含み,ポリフェノールも多く含んでいます.また,タンパク質分解酵素(アクチニジン)を高濃度で含んでいます.食味は良好で皮も食べることができますが,果皮の渋味が強い系統もあります.

【追熟】温暖地で9月,寒冷地で10月に収穫し,そのまま室温に置いても追熟して軟らかくなり可食になります.エチレン処理すると斉一に追熟させることができますが,一旦追熟して軟化した果実は急速に過熟状態になってしまいます.硬い果実を収穫して冷蔵庫に貯蔵すれば数週間は貯蔵できます.この場合エチレンを除去したり,作用を止めたりするとさらに長く貯蔵できます.

【倍数性】サルナシには倍数性の変異があります.変種のウラジロマタタビ(A.arguta var.hypoleuca)(二倍体)を加えると,四倍,六倍,七倍,八倍体が存在します.二倍体は,房総半島以西の比較的温暖な低山に自生し,屋久島が南限とされています.四倍体は広く北海道から九州に分布しています.六倍体は,本州の日本海側の多雪地帯(山形,新潟,福島など)に局在しています.七倍体や八倍体は六倍体の分布域で発見されています.

■ ウラジロマタタビ(A.arguta var. hypoleuca)
AB
A:南伊豆系統,B:南伊豆系統の雌花(みかけの両性花)

【特徴】サルナシより温暖な地域に自生分布しています.形態的には,サルナシと比較して,葉が小ぶりで縦長,裏面が粉白色である点で区別できます.果実は5g前後でサルナシよりやや小さく,果面が果粉で被われます.二倍体

■ シマサルナシ(A.rufa)
AB
A:府中系統,B:淡路系統の雌花(みかけの両性花)

【自生分布】シマサルナシは,紀伊半島東南部を東限として,四国の太平洋岸,淡路島東南部,九州の沿岸地域,山口県の島嶼部,南西諸島に自生分布しています.国外では朝鮮半島南部の島嶼部,台湾にも一部自生が報告されています.

【花】花は,5月下旬から6月上旬にかけて開花し,花径は1.5〜2cmで,花弁は白〜淡黄色で,葯は黄色,子房は黄緑色で白色の毛じが密生しています.花柱は傘状あるいは漏斗状に開きます.雄株の子房は退化しています.

【授粉】雌雄異株のため,雄株の花粉の授粉がないと結実しません.デリシオサ種やチネンシス種のキウイフルーツの雄品種の花粉でも結実させることができますが,デリシオサ種では種子の発達が不良で果実がやや小さくなることがあります.

【果実】果実は10〜30gで,緑褐色から褐色で無毛ですが,表面に皮目(ひもく)を生じます.生育場所の環境により果実の色や皮目の発生程度は変化します.果肉は濃緑色で放射状に種子が入ります.可溶性固形物含量は10〜18%で滴定酸含量は2%前後です.アスコルビン酸含量は20〜50mg/100g果肉新鮮重が含まれ,ポリフェノールも多く含まれています.サルナシとは対照的に,タンパク質分解酵素(アクチニジン)の含量が極めて少ない特徴があります.食味は良好です.

【追熟】果実は,晩生で11月中下旬に成熟します.樹上にそのまま置いても果実は落ちずに霜にあたると軟化して可食となります.硬い状態で収穫した果実は,エチレン処理することで斉一に追熟しますが,そのままではうまく追熟せず,乾燥してしぼんでしまいます.

【倍数性】二倍体,四倍体.

■ マタタビ(A.polygama)
AB
A:幼果,B:雌花(みかけの両性花)

【自生分布】マタタビは,東アジアに広く分布しており,北海道から九州まで全国に自生分布しています.北海道では平地にもみられますが,本州,四国,九州では山間地に自生しています.

【花】花は,自生地では6月中下旬に開花しますが,本研究室の圃場(香川県三木町)では5月下旬〜6月上旬に開花します.花径は2〜2.5cmで,花弁は白色,葯は鮮やかな黄色です.子房は緑色無毛で,先端が尖っています.花柱は放射状に開きます.雌雄異株で,雄株には,雌ずいが退化した雄花が着きます.一方,雌株では,一見両性花が着いているように見えますが,葯に含まれる花粉に発芽力はありません.この見かけの両性花の葯は開花後まもなく脱落しますので,雌株には葯のない雌花と両性花が混在しているように見えることがあります.他種の花粉の授粉ではほとんど着果しません.

【果実】果実は,10g前後で,樹上での軟化にともない緑色から橙黄色に変わります.緑色の果実を収穫して,追熟しても黄色に変化します.可溶性固形物含量は15〜17%で,独特の辛みのような味があります.

【倍数性】二倍体.

■ ミヤママタタビ(A.kolomikta)
AB
A:果実,B:雌花(みかけの両性花)

【自生分布】アジア東北部に広く分布し,本州中部以北の寒冷地に自生しています.マタタビ属の中でもっとも耐寒性が強い植物です.

【花】花径は1cm程度と小さく,花弁は白色,葯は黄色で,子房は緑色無毛,花柱は漏斗状に開きます.

【授粉】雌雄異株のため,結実には雄株の花粉を授粉する必要があります.サルナシやマタタビの花粉でも結実させることができます.

【果実】果実は2〜5gと小さく,果面に縦の筋があります.多量のアスコルビン酸を含むことが報告されています.

【倍数性】二倍体.


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