4. 亜種victoriae (Gray, 1856)11) [♀][♂: Salvin, 188825)]
(分布) SOLOMON 諸島: Guadalcanal 島 (Wanderer湾地域, Mbambanakira, Chocho, Popomanaseu (=Makarakombu) 山, Gold Ridge村, Aola (=Tenaghau), Ndondo Creek, Tenaru, Austin山, Kukum, Honiara, Poha川流域, Kakambona, Chiri, Gallego 山), Mbokonimbeti (=Sandfly)島, Nggela Sule (=Florida)島, Nggela Pile (=Small Nggela)島, Tulaghi島, Savo島。 [分布図5]
(発見と原記載のエピソード)最初の標本 (♀) がショットガンで撃ち落された話はあまりにも有名である。その事実を Gray (1856)は、原記載の中に「H.M.SS. “Rattlesnake号”と“Herald 号”による航海探検中、Macgillivray 氏が本国に送った数々の新奇な採集品の中にこの見事なチョウがあった。このチョウはアゲハチョウ属の Ornithoptera 亜属に属し、既知種にみられるようにこの群のチョウは非常に高所を飛ぶ。したがって、この標本を手に入れるために火薬と弾丸を使わねばならなかった。 多くの散弾が翅を貫き、標本はいくらか破損されてはいたが、このすばらしいチョウの美しさを完全に破壊するほどではない。……」 と記し、さらに採集地についてのメモがなかったため、それをソロモン(Solomon)諸島かアネイテウム (Aneiteum)、またはニュー・ヘブリディーズ(New Hebrides)かフィジー(Fiji)諸島であろうと想定した。また、命名するにあたり、もっとも尊敬していた当時の英国のVictoria女王にちなみvictoriaeとした。 論文の最後に「♂は今のところ未知であるが、この群の♂はけんらん豪華であることから、もっとも美しいと想像される。」と結んでいる。その♂は、31年後にやっとSalvin(1888)により報告されたが、その標本はWoodfordが1886年、ガダルカナル島のアオラ(Aola)で採集したものであった。また、幸運にもマライタ(Malaita)島で同時に採集された♂♀のうち、♀が完模式標本に酷似していたことから、それが間違いなくその♂であることが判明した。しかし、マライタ島の♂は、ガダルカナル島の♂と多少異っていたことから、Salvinは完模式標本の正確な採集地を知るために“Rattlesnake号”と“Herald号”の航路を知る必要があると思ったのである。その航路を調べているうちに、“Rattlesnake号”はソロモン諸島には立寄らず、Denham艦長の指揮する “Herald号”だけが1854-1855年に立寄っていることをつきとめた。さらに艦長用の海図を見る幸運に恵まれた彼は、“Herald号”がガダルカナル島のワンダラー (Wanderer)湾と、サン・クリストバル (San Cristobal)島のマキラ (Makira)には立寄ったがマライタ島には寄港していないことを知った。その当時、サン・クリストバル島では本種は発見されていなかったので、完模式標本の採集地は当然ガダルカナル島のワンダラー湾であり、ガダルカナル島のアオラのものこそ、その♂であるとした。
(特徴)本種の分布域の中央部に産する亜種で、他の亜種との中間的な要素を多く持つ。
(斑紋)♂:前翅の斑紋は亜種archeriや亜種isabellaeとほぼ同程度か小さいが、後翅の黒色内縁部から広がる黒色鱗の陰りは軽度で亜種regisとほぼ同程度である。
♀:斑紋が小さい亜種regisや斑紋の大きい亜種rubianus を除けば他亜種との差異は見られない。
(変異)♂-f. brossardi Deslisle, 19954):(前翅の斑紋変異)亜翅頂斑内に半透明黄金斑点が存在するもの。(➡reginae, epiphanes )
♂-f. gousseyi Deslisle, 20086): (後翅の斑紋変異)亜外縁黄金斑点が欠如し、裏面の黒色外縁斑点が大きいもの。
♂-f. niclasi Schäffler, 200126) (➡regis )
♀-f. jessicae Goussey, 200610) (➡rubianus )