1) オビトリバネアゲハ (Sp. aesacus (Ney, 1903)4)) [♂, ♀]
= obiana (Watterstratt) (Rebel, 1906)7)[♂, ♀](Obi島)
(分布)INDONESIA [Maluku] Obi島 (Wai, Sum),Tobalai島。[分布概念図5] [分布図9]
(垂直分布)不明。
(発見と原記載のエピソード) 原記載者Ney(1903)によれば、最初の標本はWaterstradtがオビ島で1902年の春から夏にかけて採集した際、その5月に幼虫から飼育によって羽化させたものであった。その標本は、他の膨大な数の標本とともにベルリンの有名な標本商であったHermann Rolle宛に送られ、Neyはそのうちの1♂、3♀♀を譲り受けた。そこで彼は、このチョウはpriamus群に属することは間違いないが、メガネトリバネアゲハとは異なる近似種と考え種名もaesacus (Priamus王の長男の名)とした。一方、Rebel(1906)の記載の基になった標本もWatterstratt (Waterstradtの誤り)の採集したもので、そのうちの1対をSteindachnerが購入し(多分Rolleから購入したと考えられる)、ウィーンのHof博物館に寄贈したものに基づいている。
(特徴)1種1亜種でObi島と近隣島Tobalai島のみに生息する特異な種である。外観は一見メガネトリバネアゲハ (O. (O.) priamus ) に似ているが、♂の後翅に黒色翅室斑点がないのが特徴である。同属の他の種と同様に側胸部には紅毛がある。
(斑紋)♂:斑紋の色は特有な青緑色をしており、前翅の亜前縁帯は種priamusより幾分広い。後翅は円形で、亜外縁に半透明黄金斑点が数個ある以外は無紋。腹部は黄色。
♀:斑紋は大きく、クリーム色であるが、後翅両面の亜外縁部の斑紋の黄色が欠如するのが特徴である。
(変異)♂-f. maculatusaurum Parrott & Deslisle, 19876): (前翅の斑紋変異)亜前縁帯に半透明黄金斑が存在するもの。
♂-f. claudei Deslisle & Sclavo, 20152): (前翅の斑紋変異と前・後翅の色調変異) 上記と同じ変異であるが、斑紋の色が灰色を帯びるもの。
♂-f. nadiae Deslisle, 19951): (前翅の斑紋変異)亜前縁帯が拡大し、中室の上縁へ広く鍵状に侵入するもの。
♂-f. christophi Deslisle & Sclavo, 20152): (前翅の斑紋変異) 変異maculatusaurumとnadiaeとの混合。亜前縁帯は広く鍵状に中室へ伸び、亜前縁帯の中に1個または数個の半透明黄金斑点があるもの。
♂-f. hudsoni Deslisle & Sclavo, 20152): (前翅の斑紋変異)上記変異 (♂-f. christophi ) に半透明黄金斑点がさらに中室と鍵状部に数個出現し、その上 前翅の亜外縁帯が緑色をした変異。
♂-f. viridari Deslisle & Sclavo, 20152): (前・後翅の色調変異) 斑紋が正常な青緑色ではなく緑色をしたもの。
♂-f. azurus Deslisle & Sclavo, 20152): (前・後翅の色調変異) 斑紋が正常な青緑色ではなく、明るい青色をしたもの。
♂-f. solioccassus Deslisle & Sclavo, 20152) (前・後翅の色調変異)斑紋が暗い灰緑色に赤味を帯びた幻色がある変異。湿度か温度による人工的変色?
♀-f. tenebricosa Parrott & Deslisle, 19876): (前・後翅の斑紋変異)斑紋が著しく小型化するもの。
♀-f. masaeae Ohya, 19955): (前・後翅の斑紋変異)斑紋が著しく大きく、後翅では中室端まで広がるもの。
♀-f. purpurea Sumiyoshi, 19898): (後翅の色調変異)翅室斑に青色の幻色を伴うもの。
(食草)ウミベノウマノスズクサ (Aristolochia gaudichaudii )3)。