3) アカメガネトリバネアゲハ (Sp. croesus Wallace, 185924))
Ornithoptera亜属の分布上、北西に位置するMaluku(=Molucca)諸島だけに生息する種である。同亜属の他種priamusは♂の斑紋の色が金緑色、金青緑色ないし金青色なのに本種では金黄橙色ないし金赤橙色をしている。さらに後翅の半透明黄金斑は同亜属中で最も大きく中室にも出現する。また、♂の生殖器の形態も他の亜属のものとは異なるし、♀の斑紋もBacan島の名義タイプ亜種以外では非常に大きい。これらのことを考慮して総合すれば、本種はトリバネアゲハの共通祖先からかなり早い時期に分離したのではないかと考えられる。
(分布)Maluku (=Molucca) 諸島(Sulawesi島とIrian Jayaとの間の島々)に限って生息する。[分布概念図 7]
(垂直分布)海抜 0 – 1,000 m。
(斑紋)♂:翅の地色は黒褐色。亜前縁帯は幅広いが亜外縁帯はなく、臀縁帯も短い。後翅では翅底部と亜外縁部に半透明黄金斑が存在し、亜属Ornithoptera中最大である。側胸部の紅毛は少ない。
♀:基本的には黒褐色の地色に褐色鱗に覆われた灰白色斑紋があり、亜種により斑紋の大きさは異なるが、Halmahera島産が同種の中では最大である。
(食草)ウミベノウマノスズクサ(Aristolochia gaudichaudii )、バチャンウマノスズクサ(Pararistolochia sp. A (from Bacan I.)、ハルマヘラウマノスズクサ(P. sp. B (from Halmahera I.)15) 。
*Ssp. (?) sananaensis Tsukada & Nishiyama, 1980(サナナ島亜種)
Ssp. croesus Wallace, 1859(名義タイプ亜種)
f. loc. wallacei Deslisle, 1991(マンディオリ島地域変異)
f. loc. helios Kobayashi & Hayami, 1992(カシルタ島地域変異)