2) メガネトリバネアゲハ (Sp. priamus (Linnaeus, 1758))29)
南Maluku (=Molucca)地域にその起源を発したと考えられる本種の祖先は次第に東と東南の方向へ分布を広げていったと推測される。分布が広範囲である上、ごく一部を除けば発生個体数が多いことから、各地での適合がうまくいき、New Guinea本土を中心に、近隣の島々に多くの亜種や地域変異が生まれた。ここではこれら23亜種を類似性に基づいてPriamus 亜種群(4亜種)、Poseidon亜種群 (13亜種)、東側亜種群 (4亜種)、Admiralitatis亜種群 (1亜種) およびGorongensis亜種群(1亜種)に分類した。
(分布)New Guinea島を中心に西はMaluku (=Molucca) 諸島から東はSolomon諸島まで、そして南はAustraliaの東海岸に至る。[分布概念図 6]
(垂直分布)海抜 0 – 2,000m。
(斑紋)♂:前翅の地色は光沢のある黒色で、斑紋 - 亜前縁帯、臀縁帯 – 亜外縁帯および翅央部条斑 - の色は緑色、青緑または青色である。翅央部条斑は亜種によっては欠如する。後翅は前翅の斑紋と同色で、黒色外縁帯で囲まれ、黒色翅室斑点や、個体よっては亜外縁に半透明黄金斑点がある。斑紋の色は金緑色が中心であるが、東に移行するにつれ金青色に変化する。頸部・側胸部には紅毛があり、腹部は上・下面とも鮮やかな黄色。
♀:全てのトリバネアゲハ属 (Genus Ornithoptera ) に共通する斑紋をしている。前翅には灰白色の中室斑、亜翅頂斑、翅室斑および亜外縁斑があり、後翅には同色の翅室斑があり、その中に円形をした暗色翅室斑点がある。本種では地色や斑紋は西側に生息するものは地色が濃く灰白色は大きく、東に移行するにつれて地色は淡く斑紋も小さくなる傾向がある。
(食草)タガラウマノスズクサ(Aristolochia tagala )、ウミベノウマノスズクサ(A. gaudichaudii )、リンネマンウマノスズクサ(A. linnemannii )、アレクサンドラウマノスズクサ (Pararistolochia alexandriana )、ヒレオウマノスズクサ (P. meridionaliana )、ピテクルスウマノスズクサ (P. pithecurus )、エングラーウマノスズクサ (P. engleriana )、モマンドールウマノスズクサ (P. momandul )、テイミカウマノスズクサ (P. sp. C (from Timika)30) 。