11. 亜種 poseidon Doubleday, 184711) [♂][♀: archideus (Gray, 1853)19)]
= archideus (Gray, 1853)19) [♀] (Waigeo島)
= pegasus (Felder, 1864)16) [♂, ♀] (S.W./N.W. Irian Jaya)
= valentina Vuillot, 1892 60) [♂, ♀] (南東海岸, PNG)
= eudamidas Fruhstorfer, 191318) [♂, ♀] (Finschhafen, PNG)
= eurysaces Fruhstorfer, 191318) [♂, ♀](Milne湾, PNG)
= ornata (Niepelt, 1934)33) [♂, ♀] (Lelaki島, Irian Jaya ?)
= aureus Parrott, 1987 41) [♂, ♀] (Arfak山脈, Irian Jaya)
= sterrensis Parrott, 1990 42)[♂, ♀] (Sterren (Kobowre)山脈, Irian Jaya)
= garainaensis Deslisle, 20047) [♂, ♀] (Garaina, PNG)
(分布)INDONESIA [Irian Jaya] Gag島, Waigeo島, Batanta島, Salawati島, Doberai 半島 (Sorong, Mandopi, Manokwari, Marni, Arfak山脈地域(Meni, Minyambow, Hingk, Memti, Sibjo), near Ransiki, Onin半島 (Fakfak), Panjang島, Karas島, Bomberai半島 (Babo, Kamrau湾地域, Etna湾地域, Adi島), Yamur湖地域, Nabire, Wanggar川流域, Kobowre山脈(Sterren山), Timika, Waren, Barapasi, Mamberamo川流域, Masi-Masi島, Anus島, Takar, Jayapura, Wamena, Agats, Merauke; PNG [WSP] Aitape, [ESP] But, Maprik, Ambunti, Wewak, Kondai, Kairiru島, Mushu島, [MgP] Madang, Manam (=Valcan)島, Kar Kar (=Dampier)島, Bagbag (=Rich)島, Long島, [WHP] Baiyer川流域, Hagen山, Kudjip, [ChP] Wilhelm山, Bogo, Kerowagi, [MoP] Umboi(=Rooke) 島, Finschhafen, Lae, Watut川流域, Bulolo, Wau, Aiuwa, Aseki, Aningi, Pauamunga, Waria川流域, Sini, Garaina, Morobe, [NP] Mambare川流域, Kumusi川流域, Popondetta, Afore, Wanigela, [MBP] Alotau, Sideia島, Basilaki島, [CeP] Mamai, Rodney岬 (Mori川流域), Kapogere, Sogeri, Port Moresby, Brown川流域, Yule島, Tapini, [GP] Kikori, Ogomobu, [WP] Kiunga, Togo, Daru島; AUSTRALIA [Torres Strait] Darnley (=Erub) 島, Murray (=Mer) 島, Yam島, Moa島。[分布図15, 16]
(発見と原記載のエピソード)Quoy & Gaimard (1824-1835)が、ラワック(Rawak)島の♂をPapilio priamusの変異として記載したのが最初である。しかし、Poseidonと命名したのはDoubleday (1847)で、彼はJukesがダーンリイ(Darnley)島で採集した♂をもとに独立種として記載した。一方、♀は、ワイゲオ(Waigeo)産の亜種archideusとして記載したGray (1853)が最初である。なお、亜種名poseidonはギリシャ神話の海神の名で、ローマ神話のNeptuneにあたる。
(特徴)亜種の中では最も広い地域に分布するPoseidon 亜種群の代表亜種であるだけではなく、メガネトリバネアゲハ(O. priamus )の代表であると言える。生息分布が広域であるため多くの地域変異が見られる上に個体変異、特に♀ではSchoenbergia 亜属に擬態するなどいろいろ複雑な様相が見られる。本亜種はPriamus亜種群との共通祖先から早い時期に別れ、New Guineaへ侵入した後、多種食性であるということが有利にはたらき、生息範囲を拡大していったと考えられる。
(斑紋)♂:前・後翅とも翅頂が尖る。前翅では臀縁帯と亜外縁帯はほぼ同じ幅で連続し、翅央部条斑は多くの個体で存在する。後翅の黒色外縁帯は狭い。黒色翅室斑点や半透明黄金斑の出現の有無や数には個体差がある。
♀:著しく変化に富み、個体ごとに斑紋が異なる。淡色型(地色が淡褐色で斑紋に陰りのあるもの)と濃色型(地色が濃褐色で斑紋が白色のもの)の2型があるが、概して東側産は淡色型に、西側産は濃色型に属する傾向が見られる。
(変異)多くの変異があるが、命名されたものを下記にまとめた。
♂-f. fuscuocellus Parrott & Deslisle, 198943): (前・後翅の斑紋変異)前翅裏面の黒色斑を欠くために全体が一様に緑色。後翅は両面とも亜外縁に褐色で囲まれた3個の半透明黄金斑と亜前縁室に黄金斑が存在する。
♂-f. melania Schäffler, 200155) (=ripponi Deslisle & Sclavo, 201510)) (前・後翅の斑紋変異)前翅表面では亜前縁帯は狭く、亜外縁帯はほとんど消失し、後翅表面も著しく黒化するもの。
♂-f. rochati Deslisle & Sclavo, 201510): (前・後翅の斑紋変異) 亜前縁帯と亜外縁帯は狭いが、翅央部条斑は大きい。後翅には亜外縁部に小さい半透明黄金斑が3個あるだけで、前縁側2/3は黒化するもの。
♂-f. viridocellularis Schäffler, 200155): (前翅の斑紋変異)翅央黒色部に緑色斑が存在するもの。(➡priamus)
♂-f. radians Parrott & Deslisle, 198943): (前翅の斑紋変異)亜前縁帯の亜翅頂部に黄金斑条と第5室に黄金斑点があり、中室に大きな緑色斑があるもの。
♂-f. pabloi Deslisle & Sclavo, 201510): (前翅の斑紋変異) 翅央黒色部の亜翅頂部に短い緑色条斑が2個あり、中室内に緑色鱗が散在する(斑紋形成はない)もの。(➡macalpinei )
♂-f. marioi Deslisle & Sclavo, 201510): (前翅の斑紋変異) 中室前縁と亜前縁帯の第8, 9室に半透明黄金斑が存在するもの。
♂-f. aureopunctata (Dufrane, 1930)13): (前翅の斑紋変異)亜外縁帯の第4, 5室の中に2個の黄金斑点が存在するもの。
♂-f. poseidon Doubleday, 184711) (=ornata (Niepelt, 1934)33)): (後翅の斑紋変異)亜外縁部に半透明黄金斑点が存在するもの。
♂-f. cronius (Felder, 1864)16): (後翅の斑紋変異)黒色翅室斑点を欠如する無紋型。
♂-f. nigropunctata (Dufrane, 1930)13): (後翅の斑紋変異)第4室の黒色翅室斑点が大きく、第3室では微細なもの。
♂-f. pegasus (Felder, 1864)16): (後翅の斑紋変異)表面で、黒色翅室斑点が微細 なもの。
♂-f. triton (Felder, 1864)16): (後翅の斑紋変異)裏面で、後角部の黒色斑点を欠如するもの。
♂-f. obscura (Niepelt, 1934)33): (後翅の斑紋変異)表面で、亜前縁室が黒化し、第6室の黒色翅室斑点と融合するもの。
♂-f. muckai Schäffler, 200155): (後翅の斑紋変異)後翅に黒色翅室斑点はないが黒色鱗で濃く覆われ黒化するもの。
♂-f. kerjoanti Deslisle & Sclavo, 201510): (前・後翅の色調変異)斑紋の色がオリーブ緑色をしたもの。
♂-f. flammeus Parrott & Deslisle, 198943): (前翅の色調変異)前翅表面の亜前縁帯の色が緑色、明るいオレンジ色、青灰色および褐色。臀縁帯と亜外縁帯は緑色で、先端に向ってオレンジ色になる。
♂-f. ketchupabdominalis Attal, 19892): (特殊な変異)腹部上面にオレンジ赤色の斑点があるもの。
♂-f. ishigakii Deslisle, 20047): (特殊な変異)前翅は中室先端外にある数個の黄金条を除けば緑色。後翅は緑色と黄色で、亜外縁にはオレンジ褐色鱗で囲まれた4個の黄金斑点列がある。
♂-f. bilali Deslisle & Sclavo, 201510): (特殊な変異) O. croesus lydius の♂-f. pannis に似る。前翅の黒色の性標を除けば、前・後翅とも淡褐色鱗で覆われた緑色。前翅には半透明黄金斑が多数存在し、後翅には半透明黄金色の亜前縁室斑および亜外縁(6室から4室)斑点がある。
♀-f. boreas (Fruhstorfer, 1901)17): (前・後翅の斑紋変異)前翅では中室斑を欠如し、翅室斑も縮小する。また後翅の翅室斑も縮小するもの。
♀-f. albiplaga (Röber, 1937)48): (前・後翅の斑紋変異)前翅の中室斑は欠如(boreas 型)。逆に後翅の翅室斑は大きく、黒色翅室斑点は小さい。
♀-f. priameius (Röber, 1937)48): (前・後翅の斑紋変異) 前翅の中室斑は前縁に長い条斑と後縁に不明瞭な小斑からなり、亜翅頂斑は非常に長い。後翅の翅室斑は縮小する。
♀-f. radialei Parrott & Deslisle, 198943): priameiusに酷似する。同一変異か?
♀-f. beigeli Schäffler, 200155): (前・後翅の斑紋変異)亜翅頂斑と翅室斑は長いが、中室斑は痕跡程度。後翅の翅室斑はわずかに縮小し、暗色翅室斑点は小さい。
♀-f. le moulti (Dufrane, 1946)14): (前・後翅の斑紋変異)前翅の全ての斑紋が大きく互いに融合する。後翅の翅室斑も大きく中室端にも白斑があるもの。
♀-f. cecileae Deslisle & Sclavo, 201510): (前・後翅の斑紋変異) 前翅は中室斑を除き、他の斑紋は微細または消失する。後翅は種croesusの名義タイプ亜種の♀に似るが、翅室斑が灰青色鱗で縁取られる黒化型。
♀-f. paradoxa (Dufrane, 1930)13): (前翅の斑紋変異) 中室斑と第2翅室斑が特に大きく、他の斑紋が微細または消失するもの。
♀-f. archideus (Gray, 1853)19): (後翅の斑紋変異)翅室斑が大きく、中室端に白斑が存在するもの。
♀-f. akakeoides Haugum & Low,198122)(=aureus Parrott, 198741)) (Schoenbergiaの類似型)。地色が濃く、斑紋との境界が鮮明。後翅の亜外縁部の色彩が濃く、黒色翅室斑点が小さい。
♀-f. pseudotroides Haugum & Low, 198122): (Troides 亜属の類似型)。前翅は無紋で、後翅の斑紋の形は正常であるが腹部とともに濃黄色。
♀-f. titanoides Sumiyoshi, 198958): (O. goliath titanの類似型) 上記変異に似る。前翅は黒色で無紋。後翅の斑紋は黄色であるが全体に短く、暗色翅室斑点も小さく孤立する。
♀-f. gabrielleae Deslisle & Sclavo, 201510): (前・後翅の斑紋変異) titanoides に似た変異。前翅は黒色。後翅の翅室斑は著しく短く暗色翅室斑点を欠き灰色。
♀-f. summanus Ohya, 199736): (前・後翅の色調変異)Troides型。前翅は小さい亜翅頂斑および亜外縁斑点列以外は黒色。特徴は第1, 2亜翅頂斑が灰緑色鱗で覆われることである。後翅の斑紋と腹部は濃い黄色。
♀-f. nivalis Fruhstorfer, 191318): (前・後翅の色調変異)斑紋が正常のクリーム色ではなく白色をしたもの。
♀-f. aurago Fruhstorfer, 191318): (前・後翅の色調変異)後翅の翅室斑が濃い黄土色で、前翅裏面(表面は白色)では中室に黄色鱗の痕跡がある。
♀-f. alixiae Deslisle & Sclavo, 201510): (前・後翅の色調変異) 前翅は黒色で、亜翅頂部に小さな緑色条が1本、亜外縁には小さな緑色斑点が3個、白色斑点が2個ある。後翅の翅室斑は黄色であるが亜外縁部は褐色鱗で覆われる。暗色翅室斑点の内側は濃い緑色鱗がかぶさる。
♀-f. michikoae Sumiyoshi, 198958) (=viridocoronae Deslisle & Sclavo, 20089)) (前・後翅の色調変異) 斑紋は全体に黄色。緑色鱗が前翅の斑紋の周辺に密集し緑色斑を形成する。時には後翅の中室付近にも見られることがある。
♀-f. kirschi Oberthür, 188835): (前翅の色調変異)変異aurago に似るが、裏面だけではなく表面の斑紋も黄色であることで異なる。
♀-f. decora (Niepelt, 1934)33) (=raymondeae Deslisle & Sclavo, 201510)): (前翅の色調変異)中室斑は黄色で緑色鱗が存在し、後翅の翅室斑は黄色を帯びる。
♀-f. lavata Fruhstorfer, 191318): (後翅の色調変異)裏面の翅室斑の亜外縁部の黄色が欠如するもの。
♀-f. ishigakii Deslisle, 20047): (特殊な変異): 翅の基部、翅脈と翅の周辺部の黒色を除き全体が白色。白化型の極型。亜種 euphorion ♀-f. weylandiに似る。
♀-f. multicolorei Parrott & Deslisle, 198943): (特殊な変異)前翅の中室斑は緑色鱗で二分され、淡青色または淡青灰色で縁取られる。後翅の黒色翅室斑点は非常に大きく互いに融合する。淡青色が各暗色翅室斑点の先端や翅脈に沿い、そして中室先端部に存在し、さらに中室下脈に沿って緑色鱗がある。
♀-f. bernadineae Deslisle & Sclavo, 201510): (特殊な変異)前翅の中室は全体に白色で3つの部分にほぼ等分され、基部は薄い緑色で前縁に向い徐々に黄色となり、中室先端部は淡い暗青色になる。
♀-f. bertounesquei Deslisle & Sclavo, 201510): (特殊な変異) 前翅はradialei型で中室斑および亜翅頂斑は黄色。後翅の翅室斑の基側は僅かに白色であるが、次第に黄色に変化し、亜外縁では全体に褐色を帯び、暗色翅室斑点を欠く。