15. 亜種 pronomus (Gray, 1853)19) [♂, ♀]
(分布)AUSTRALIA [Torres Strait] Hammond島, Thursday島, Prince of Wales島,[Cape York 半島] Lockerbie Scrub, Bamaga, Somerset, Jardine川流域。 [分布図21]
(発見と原記載のエピソード)MacgillivrayがH.M.SS. “Rattlesnake”号による科学調査中、オーストラリアのヨーク岬で採集した2♂♂1♀をもとにGray(1853)がPapilioの新種として記載した。pronomusとは“前方の地域(ヨーク岬を意味する)”なのかHaugumとLow (1979)の推測によるpronominare “代名詞(poseidonの)”なのか、命名の意味は不明である。
(特徴)オーストラリア大陸にいる4亜種のうち、最北端に生息する亜種。他の3亜種は原始的なPriamus亜種群に属するが、本亜種は翅形、斑紋および生殖器などからPoseidon亜種群に属すと思われる。すなわち他の3亜種は早期にオーストラリアに渡り、固有の形質を獲得していったのに対し、本種はその後になってNew Guinea – Torres Strait – Cape York半島 (Australia)と分布を拡大していったと思われる。それを裏付けるものとしてTorres 海峡の島々に分布する個体はDarnley (=Erub)島 (亜種poseidonの基産地) を含み、すべての個体が亜種poseidonに似た形態をしているが、オーストラリア大陸に最も近いHammond島やThursday島の個体は亜種poseidonと亜種pronomusとの中間的な形態を示している。
(斑紋)♂:亜種poseidonより小型である。前翅の翅央部条斑は微細な個体が多い。また後翅の前縁室には半透明黄金斑が存在し、黒色翅室斑点が小さいものが多い。黒色外縁帯は狭い。
♀:濃色型(地色が濃く、斑紋が白い)だけが知られている。前翅の斑紋はよく発達して大きい。後翅の翅室斑の外縁は表面では黄褐色、裏面は濃い黄色。中室まで届かない。
(変異)特異な変異は知られていない。
(食草) タガラウマノスズクサ(Aristolochia tagala )30)。