1.亜種priamus (Linnaeus, 1758)29) [♂][♀: panthous (Linnaeus, 1758)29)]
= panthous (Linnaeus, 1758)29)[♀] (Ambon島)
(分布) INDONESIA [Maluku] Ambon 島 (Laha, Paso, Belakang Soya), Seram島(低地), Haruku島, Saparua島。[分布図10]
(発見と原記載のエピソード)1719年、Vincentiusによるアンボン島の♂が最初の記載である。ついで1742年にはMusei imp. Petrograd Vol. 1 (p.664)に、さらに1745年にはAubenton (Planch. Enlum.t.45)に記載され世に紹介された。その後、Linnaeus (1758)はアンボン島産の♂をPapilio Eques Trojanus Priamus、外観のまったく違った♀をPapilio Eques Trojanus Panthousとそれぞれ命名し、Panthousの産地をインドとした。彼はPanthousとして2種類の♀を同一種の♂♀として誤って記載した。つまり、サビモンキシタアゲハT. hypolitusの♀をPanthousの♂としメガネトリバネアゲハO. priamusの♀をPanthousの♀としたのである。これはその当時、別種を思わすほど異なった外観を示す♂♀の区別ができなかったために起った誤りで、当然かも知れない。なお、priamusはトロイ最後の王Priamに、またpanthousはトロイのApollo神の司祭にちなむ。
(特徴) リンネ (Linnaeus, 1758)29) によって最初に記載されたトリバネアゲハ。亜種中最大で、とくに♀は開張20cm に達することがある。
(斑紋)♂:大きさや斑紋(上記の特徴)はかなり安定して、変異は殆んど見られない。
♀:前翅の斑紋は小さく、多くの個体では中室斑を欠く。また、後翅の翅室斑の褐色の陰りが濃いため不明瞭である上、中室側に偏在するため外縁帯は広い。
(変異) ♂-f. fasciata Schäffler, 200155): (前・後翅の斑紋変異)前翅の中室端に緑色斑、後翅の亜外縁に半透明黄金斑点が2列存在するもの。
♂-f. viridocellularis Schäffler, 200155): (前翅の斑紋変異)翅央黒色部に緑色斑点が存在するもの。(➡poseidon )
♂-f. aureofasciata Deslisle, 20047): (前翅の斑紋変異)翅央黒色部の中に半透明黄金斑が存在するもの。
♂-f. divina Fruhstorfer 191318): (前・後翅の色調変異)斑紋が表裏とも青色を帯びるもの。
♀-f. obscurus Deslisle, 20047): (前・後翅の斑紋の変異)斑紋が著しく小さく、後翅の暗色翅室斑点が異常に大きいもの。
♀-f. harukensis Schäffler, 200155): (前・後翅の斑紋の変異)斑紋がすべて大きいもの。
♀-f. pseudobrunneus Schäffler, 200155): (前翅の斑紋の変異)斑紋が著しく小さく、一部消失するもの。
♀-f. addenda Fruhstorfer, 191318): (後翅の斑紋変異)中室先端に白斑が存在するもの。
*f. loc. sclavoi Deslisle, 20098) [♂, ♀]
(分布)INDONESIA [Maluku] Seram島のManusela 山脈 (2,000m以上)。[分布図10]
(特徴)従来Manusela山脈産は同一亜種とされていたが、両性とも小型である上、いくらか特徴が見られるということで地域変異として記載された。
(斑紋)♂:斑紋の輝きが少なく、幾分暗く、やや青味を帯びる。
♀:地色が濃く、灰白斑紋が明るいためコントラストが良い。