1.亜種procus (Rothschild, 1914)22)[♀][♂: (Talbot, 1920)27)]
(分布)INDONESIA [Maluku] Seram島 (Kamarian, Makariki, Manusela山脈 (Binaiya山, Manusela, Piliana)。[分布図50]
(発見と原記載のエピソード)Rothschildは、セラム島におけるStresemannの採集品の中に、メガネトリバネアゲハの♀と一緒にあった変異と思われる1♀を見つけた。しかし、展翅の際、それは変異ではなくゴライアストリバネアゲハ群の新種であることを知り、1914年Troidesの新種procus (ラテン語で“求婚者”の意味)として報告した。残念なことに正確な採集地が分からなかったので、やむなくセラム島の中央部と考えた。一方、Hill博物館の依頼を受けセラム島で1919年10月から11月にかけマヌスラ(Manusela)山脈(6000フィート)でキャンプを張り、採集を続けていたPratt兄弟が、多くの困難のすえ、2500フィートの地点で3♂♂を採集し、これが翌年Talbotによって報告された。Rothschildが推測した生息地は見事に的中したのである。
(特徴)分布上、最も西に位置するSeram島固有の最大の亜種。両性とも特異な斑紋と翅形から他の亜種との識別は容易である。
(斑紋)♂:前・後翅とも翅頂は丸味を帯びる。前翅は外縁黒色帯が幅広いため緑色帯は短い。後翅も同様に黒色外縁帯や緑色の翅脈の縁取りが幅広いため半透明黄金斑は小さい。また、緑色翅室斑点の中心部に黒色斑点がない。
♀:翅形は丸味を帯びて巨大。翅の地色はチョコレート色。前翅の斑紋は大きいが、中室斑がないのが特徴である。後翅の翅室斑は大きく中室端に小斑が存在する個体が多い。また表面では亜外縁に黄色がなく、裏面に僅かに存在するに過ぎない。暗色鱗による陰りが濃いため暗色外縁帯と翅室斑との境界が不明瞭。
(変異) ♂-f. confluenta Schäffler, 200124): (前翅の斑紋変異)亜前縁帯と肘状帯とが緑色鱗の散在で結合するもの。
♂-f. moustacheus Deslisle, 20042): (前翅の斑紋変異) 前翅の第1b脈の上縁に沿って黒い帯が口ひげ状に存在するもの。(➡titan )
♂-f. goudreaulti Deslisle & Sclavo, 20083): (前翅の斑紋変異) 亜前縁帯の翅頂部の第8室に赤色条斑が存在するもの。(➡titan )
♂-f. nigraocellatus Haugum & Low, 19819): (後翅の斑紋変異) 緑色翅室斑点の中心に黒色点が存在するもの。
♂-f. primitus Deslisle & Sclavo, 20154): (後翅の斑紋変異)緑色翅室斑点が欠如するもの。原始的な属Troidesへの先祖返りと考えられる。(➡samson )
♂-f. jeromei Deslisle & Sclavo, 20083): (前・後翅の色調変異)緑色部が青色を帯びるもの。また後翅の半透明黄金斑は淡い黄褐色。腹部は正常な黄色ではなく、非常に淡いクリーム色。
♀-f. okai Deslisle & Sclavo, 20154): (前・後翅の斑紋変異)斑紋が異常に大きく、前翅では翅頂斑、翅室斑と亜外縁斑がすべて融合し、中室斑も存在する。後翅では翅室斑は中室端を越え亜前縁室まで広がる。暗色翅室斑点が小さい白化型。
♀-f. albopuncta Ohya, 198317): (前翅の斑紋変異) 中室に斑紋が存在するもの。