meridionalis（ヒレオトリバネアゲハ）

３）ヒレオトリバネアゲハ (Sp. meridionalis (Rothschild, 1897)⁷⁾ [♀] [♂: Rothschild & Jordan, 1899⁸⁾]

＝tarunggarensis (Joicey & Talbot, 1927)⁴⁾ [♀][♂: Pasternak, 1981⁶⁾] (♀: Wanggar 川流域, Irian Jaya；♂：Kamrau湾地域, Irian Jaya)

本種はトリバネアゲハ（Ornithoptera ）の中では最も小型であり、♂の後翅は著しく小さく、尾状突起の先端が膨らむことで同群の近似種ゴクラクトリバネアゲハ（O. paradisea ）とは明らかに異なる。ゴクラクトリバネアゲハがNew Guineaの北側に生息するのに対し、本種は南側に生息している。以前は西のIrian Jaya 産 (ssp. tarunggarensis )と東のPNG 産 (名義タイプ亜種)は別亜種と考えられてきたが、多くの個体を検することができるようになった現在では同一亜種と考えられている。

（分布）INDONESIA [Irian Jaya] Kamrau湾地域, Wandammen 半島,Yamur湖地域, Nabire, Nomnagihe (Wanggar川流域), Mapia (Kobowre 山脈), Timika, Yahukimo, Merauke. ; PNG [WP] Kiunga, [WSP] Frieda 川 Airstrip, Kutubu湖地域 (Pimaga), [MoP] Menyamya, Aseki, Titauwowi, [GP] Kaintiba, Kerema, [CeP] Angabunga川流域, Aroa川流域 (Owggara), Doa農園, Brown川流域, Cape Rodney, Mamai Estate, Port Glasgow, [MBP] Mailu地区, Alotau, Samarai島。 [分布概念図 10], [分布図40, 41]

（垂直分布）海抜　0 – 1, 000 m。

（発見と原記載のエピソード）meridionalis 最初の発見者はA.S. Anthonyである。彼は、1895年7月ミルネ湾地域のマイルで1♀を採集し、その標本に基づいてRothschild (1897)はゴクラクトリバネアゲハの亜種として記載した。その後、第2の♀がMeekによりサマライの近くで採集され、Rothschildはその標本を1897年の末に受取っている。さらにMeekは1899年2月4日に最初の♂と、同年2月13日に第3番目の♀をミルネ湾地域で採集した。今まで未知であった♂はゴクラクトリバネアゲハとは明らかに異なっていたためRothschildとJordan (1899)は、新種として改めて記載した。Rothschildらはその序文に、「♂が想像していたものとはかなり異なっていたことに非常に驚いている」と述べている。なお、種名meridionalisは“南の”という意味のラテン語である。

tarunggarensis JoiceyとTalbot (1927)による原記載のもとになった2♀♀の標本は、C., F.およびJ. Prattにより、西イリアンのヘールヴィンク(Geelvink)湾にあるワンガールから25マイル南のノムナギーへ(Nomnagihe、 標高2000フィート)と、ワンガール川の海岸線より15マイルの所(標高600フィート)で、1921年に採集されたものである。一方、♂は長い間不明のままであったが、Pasternakがカムラウ湾地区内で、1978年、1979年および1980年の三回にわたる野外研究中、最初の年に終齢幼虫から飼育によって羽化させたものである。なお、亜種名tarunggarensisは、現地語による土地名(現在は用いられていない)にちなむ。

（斑紋) ♂：前翅の大きさに比べて外縁が陥凹した後翅は著しく小さい。斑紋の形式は両性ともParadisea種群と同じであるが、前翅では亜前縁帯は狭く、肘状帯が大きく、臀縁帯は短い。また、後翅の半透明黄金斑は各翅室に広がる。内縁の飾毛は長く白色で、腿節は黒。

♀: 基本的には他のゴクラクトリバネアゲハ亜属（Schoenbergia ）のものと変わらない。翅の地色は黒色で斑紋は純白で、大きい。前翅の基部から中室斑にかけて青灰色鱗による不明瞭な斑紋（翅底条）があるのが特徴である。後翅の翅室斑は中室端を含め水平に広がる。暗色翅室斑点は丸くて大きい。斑紋の亜外縁は黄褐色で、黒色鱗で覆われる。外縁帯は幅広く波状。腿節は黒色。

（変異）   ♂-f. sclavoi Deslisle, 2004¹⁾:（前翅の斑紋変異）肘状帯が拡大し中室に深く侵入した部分に２個の黄金条斑があるもの。

♂-f. pasternaki Deslisle & Sclavo, 2015³⁾: (前翅の斑紋変異）全ての帯が広がり互いに結合し全体が緑色になり、中室の中央部に黒色条斑だけが存在するもの。

♂-f. hiromii Deslisle & Sclavo, 2015³⁾: (前・後翅の色調変異) 翅の基部は濃い青色で、先端に向って徐々に明るくなる。青色の肘状帯は僅かながら褐色鱗に覆われる。

♂-f. maculafuscus Deslisle & Sclavo, 2015³⁾: (前翅の色調変異）肘状帯に暗褐色鱗によるシミ状の模様が左右対称に存在するもの。

♀-f. odileae Deslisle & Sclavo, 2008²⁾: (特殊な変異）前翅の斑紋は拡大。後翅の後角は尖り、暗色翅室斑点は縮小または一部消失する。

♀-f. kobayashii Deslisle & Sclavo, 2015³⁾: (黒化型) 前翅の斑紋は半分に縮小し、亜外縁斑は消失。後翅は翅室斑も半分縮小するが、暗色外縁帯は著しく幅広い。

（食草）ヒレオウマノスズクサ (Pararistolochia meridionaliana)、 テイミカウマノスズクサ (P. sp. C (from Timika))⁵⁾ 。