5)キマエラトリバネアゲハ(Sp. chimaera (Rothschild, 1904)11))
Ssp. chimaera (Rothschild, 1904)(名義タイプ亜種)
Ssp. charybdis (van Eecke, 1915)(マオケ山脈亜種)
f. loc. dracaena (Joicey & Talbot, 1916)(ウォンディウォイ山脈地域変異)
*Ssp. flavidior (Rothschild, 1913)(フオン半島亜種)
本種はTithonus種群の東側の代表種であり、主として東経134°以東のNew Guinea 本島の山岳地帯だけに生息する高地性の種で3亜種1地方型に分類されているが、Huon半島産の亜種flavidiorや最近再記載された地方型dracaenaについては資料が少なく更なる検討が必要である。
(分布)Papua側の東産種群はOwen Stanley山脈から中央山塊の1,600mから2,800m、Irian Jaya側の西側産群はMaoke山脈、Jayawijaya山脈そしてKobowre山脈など1,000mから1,800mの高地に生息する。[分布概念図 12]
(垂直分布)海抜 1,000 – 2, 800 m。
(特徴)♂はチトヌストリバネアゲハ(O. tithonus )に、そして♀はロスチャイルドトリバネアゲハ(O. rothschildi )に似ていることから、本種は両者の近似種であることを表している。体毛の発達は顕著で、特に♀の腹部は黒色毛と黄色毛による縞模様を形成する。これと同じような縞模様は高地性の別種ロスチャイルドトリバネアゲハ (O. rothschildi )でも見られる。
(斑紋)♂:前翅の翅頂は尖り、外縁が内側に弧を描く。後翅の内側に切れ込みがあるが全体としては楕円形をしている。前翅の3本の緑色帯のうち、臀縁帯は同種群の中では長く後角に達する。後翅の第4- 3室はほぼ全体が半透明黄金斑で覆われる。黒色翅室斑点(2ないし3個)は前縁側ほど小さい。頭部は小さく、眼球後縁の白い縁取りが不明瞭であることなど多くの特徴がある。
♀:地色は黒褐色から暗褐色。前翅は突出し、外縁は陥凹する。前・後翅とも外縁は波状。前翅にはすべての斑紋が存在するが小さく、亜翅頂斑は二分される。後翅の翅室斑の外縁は凹凸が顕著で、円形の暗色翅室斑点より内側は白色、外側は黄土色で黒色鱗が濃く散在する。腹部は黒色と黄色の縞模様をした体毛で覆われる。
(食草)ピテクルスウマノスズクサ(Pararistolochia pithecurus ), エングラーウマノスズクサ (P. engleriana )8)。