1.亜種chimaera (Rothschild, 190411))[♀][♂: (Rothschild & Jordan, 1905)13)]
(分布)INDONESIA [Irian Jaya] Jayapura; PNG [WSP] Telefomin, [EP] Porgera, Laiagam, [SHP] Mendi, Ialibu, [ChP] Kerawagi, Yanderra, [MgP] Bundi-Bundikara, [EHP] Goroka, Otto山 (Kabebe), Gahavisuka山, [MoP] Menyamya, Gumi, Oiwa, Aseki, Sam Sam山, Bulolo, Wau, Kaindi山, Waria 川上流, [CeP] Angabubga 川流域(Tapini), Owen Stantley Range (Woitape), Aroa川上流 (Owgarra), Hydrographers山脈。 [分布図48]
(発見と原記載のエピソード)Rothschild (1904)の原記載のもとになった標本(1♀)は、1903年5月末日、アロア(Aroa)川上流の北にあるオウガラ(Owgarra)で原地人が採集したものをMeekが入手したものであった。また、♂は1904年11月から1905年2月にかけ、セント・ジョセフ(St. Joseph)川の支流であるアンガブンガ(Angabunga)川に沿った標高6000フィートの場所でMeekが採集した3♂♂7♀♀をもとに、RothschildとJordan (1905)により記載された。なお、Chimaeraは、頭がライオン、体はヤギ、尾はヘビで、火をはく怪物の名である(ギリシャ神話)。
Meek氏が最初の♂を採集したときの様子を紹介する。「ついに、新種キマエラトリバネアゲハの♂の捕獲に成功した。それは全体が黒と黄金をした、もっとも美しい昆虫である。前翅には3本の長い帯があり、後翅は半透明の黄金色で、尾状突起を思わすような小さい突起がある。大きさは普通のトリバネアゲハ(O. priamus poseidonのこと) の♀とほぼ同じ大きさで、前翅の翅幅は非常に広い。このオスの標本が手に入った時は、例えていえば莫大な遺産が残された時の喜びよりもはるかに嬉しかったので、私はこの功績に対して気前の良い心づけを与えてこの幸運に恵まれた少年を驚かせてやった。つまり、2シリング -彼は英国の通貨の価値を知っていた- と、英国製のベーコンの缶詰2個、それにたばこを5本与えたのである。こういった種類のすばらしい発見は採集家の心を掻き立てるものである。この少年は、これまでの辛苦やいざこざはすべて忘れ去り、ただ自分が科学に何らかを与え、自然からその秘密をまた一つ奪ったことだけをいつまでも忘れずにいるだろう。「小さな秘密 !」と言う人がいるかも知れないが、博物学者たちはそうは思わない。(A Naturalist in Cannibal Land. 142頁、1913)
(特徴)Papuaの山岳地帯に限って生息し、亜種charybdis より大きく、翅幅が広い。
(斑紋)♂:前翅の3本の緑色帯と後翅の半透明黄金斑は亜種charybdis より縮小するので新地域変異dracaena を除けば、全体に暗い感じを与える。
♀:後翅の翅室斑は灰色で、暗色翅室斑点より外縁は黒色鱗で濃く覆われた黄土色ないしは褐色に変る。
(変異) ♂-f. aureosedulum Deslisle, 20042): (前翅の斑紋変異)亜前縁帯の翅頂部に1ないし2個の半透明黄金斑が存在するもの。
♂-f. confluenta Haugum & Low, 19795): (前翅の斑紋変異)(➡charybdis )
♂-f. dioni Deslisle & Sclavo, 20083): (前翅の斑紋変異)(➡charybdis )
♂-f. aurata Rousseau-Decelle, 193514): (前・後翅の色調変異): 緑色部が黄金色であるもの。
♂-f. sanguismaculata Deslisle & Sclavo, 20154): (前翅の色調変異) 亜前縁帯に赤い斑点があり、肘状帯の外側へ広がるもの。
♂-f. manguini Deslisle & Sclavo, 20154): (前・後翅の色調変異) (➡charybdis )
♀-f. exellens Haugum & Low, 19795): (前・後翅の色調変異) 全ての斑紋が黄色を帯びるもの。
♀-f. herminea Rousseau-Decelle, 193514): (後翅・腹部の色調変異)後翅の翅室斑および腹部のすべての黄色が欠如するもの。