trojana（パラワンアカエリトリバネアゲハ）

２）パラワンアカエリトリバネアゲハ

(Sp. trojana (Staudinger, 1889)³⁾) [♂] [♀: trojanus, (Rothschild, 1895)²⁾]

= trojanus, (Rothschild, 1895)²⁾[♂,♀](Palawan島)

Palawan島 (Philippines) だけに生息する大型種であり、亜種は存在しない。斑紋は非常に安定していて、変異はほとんど知られていない。発見された当時はアカエリトリバネアゲハ（Trg. brookiana）の亜種と考えられたが、形態や斑紋および生殖器などから別種として分類されている。また、以前考えられていたほど稀ではないことも分かってきている。

（分布）PHILIPPINES: Palawan島 (Roxas, Cleopatra Needle, Cabayugan, Olangoan, Tarabanan, Beaufort 山, Puerto Princesa, Irahuan(=Irawan), Balsahen川流域, Thumb Peak, Stavely山, Iwahig川流域, Salakot滝, Matatgao (=Maglasgao) 川流域, Mainit, Bataraza)。 [分布概念図 17],  [分布図70]

（垂直分布）海抜　0 – 600 m。

（発見と原記載のエピソード）本種は、Dr. Platenにより提供された5♂♂の標本をもとにStaudingerが1889年に新種として記載したものである。彼は原記載の中で、♀の標本がないことを非常に残念に思っていると書いているが、♂に関するかぎりほとんど変異がないことを指摘している。また、♂からすればBrookianaの地域変異とも考えられるが、大きさや斑紋の色や形の相違から独立種とした。彼は論文の最後に、本種はBrookianaから分化した後、種と化したのであろうと仮説を述べる一方、パラワン島の地方型である可能性もあると述べている。同年(1889年)、Honrathはベルリン昆虫学会の3月18日に開かれた集会で、本種を会員に披露している。その会でも、Brookianaと本種との斑紋の相違は顕著で、その特異性から独立種にすべきで、しかもPompeus群の系列に入ると結論づけている。なお、種名trojanaは“Troy(人)の”という意味。

（斑紋）♂：翅の色は光沢がある黒色。前翅の斑紋はアカエリトリバネアゲハ (Trog. brookiana ) に似るが、緑色楔状斑は短く、先端が丸みを帯び、すべて互いに離れて存在し、外縁に平行（前種は前縁に平行）して７個並ぶ。色は金黄緑色ではなく、金青緑色である。後翅は独特で、前翅の楔状斑と連続する位置に外縁と平行に金青緑色の帯状斑があり、その翅底側は金青色斑が広がる。裏面はアカエリトリバネアゲハに似るが、斑紋は非常に小さい。

♀：翅の地色は淡い褐色。斑紋はアカエリトリバネアゲハに似るが楔状の金緑斑は淡く、第1b, 2, 3脈までは淡い黄緑色で、翅頂に向って次第に白色化する。後翅では翅底から金青色斑、次いで金緑色斑となり淡く外縁へ向かって広がる。亜外縁には白い矢状斑が連続した帯が明瞭に存在する。裏面は前・後翅とも表面より幅広い白色斑と、前翅にはコバルト青色の線状斑が径脈の前縁と第1b室で肘脈に沿って存在する。頸部の紅毛はあせた黄紅色。

（食草）トロヤナウマノスズクサ (Aristolochia sp. C (from Palawan I.)), ジャックウマノスズクサ (A. jackii) ¹⁾ 。