17) タラウドキシタアゲハ (Sp. dohertyi (Rippon, 1893)3) [♂, ♀]
= vordermani (Snellen, 1895)5) [♂,♀](Talaud島)
(分布)INDONESIA [N. Sulawesi] Talaud諸島 (Karakelong島, Salibabu 島, Kaburuang島), Sangihe諸島 (Sangihe島)。 [分布概念図 36], [分布図150]
(垂直分布)低地(詳細は不明)。
(発見と原記載のエピソード)1892年2月から3月にかけ、タラウド諸島でDoherty(種名は彼に献名されたものである)がはじめて採集した標本を、Elwesの好意でRipponが譲り受け、その翌年の1893年新種として記載した。その序文に「この種は移行型と考えられるため系統発生学的には非常に興味がある」と述べている。
(特徴)Talaud-Sangihe諸島に限って生息する特産種。黄金斑がない唯一のキシタアゲハとして知られている。本種はフィリピンキシタアゲハ(T. rhadamantus )の近似種で、以前はその亜種として取り扱われたこともある。
(斑紋)♂:前・後翅の翅頂は尖り、近似種のものに似る。前翅は光沢がある黒色で、第2-9脈までの翅脈条が透けて見える。後翅も黒色で光沢があり無紋。裏面では、前翅の第2-9脈には灰色の翅脈条があり、後翅では無紋のものや第2室から亜前縁室の亜外縁に、次第に小さくなる黄色い翅室斑があるが、その大きさや数は個体差がある。頸部・側胸部には紅毛がある。腹部の上面は黒色で、下面は黄白色である。
♀:前翅の翅頂および後角は丸味を帯び、後翅の外縁は波状の凹凸がある。前翅は濃褐色で、中室端と第2- 9脈まで淡い不明瞭な灰色の翅脈条がある。中室先端はM字状、第2脈に沿う翅脈条は中室に達しない。後翅の色は前翅より濃く、中室を中心に汚黄白色をした極小さい斑紋があるものから無紋のものまで個体変異が著しい。腹部の上面は黒褐色、腹面は黄土色と黒色の縞模様。
(変異) ♂-f. fasciculatus Lathy, 18991): (前翅の斑紋変異) 裏面の灰白色の翅脈条は幅広く、互いに融合して幅広い帯を形成するもの。
♀-f. fasciculatus Lathy, 18991): (前翅の斑紋変異) 翅底部1/3を残し、すべて褐灰色の翅脈条斑で覆われるもの。
♀-f. dohertyi (Rippon, 1893)3): (後翅の斑紋変異)翅室斑が存在するもの。(正常型)。
♀-f. vordermani (Snellen, 1895)5) (=futura Rumbucher & von Knötgen, 19994)): (後翅の斑紋変異)翅室斑を欠如するもの。
(食草)タガラウマノスズクサ (Aristolochia tagala ), ウミベノウマノスズクサ (A. gaudichaudii )2)。