15) コウトウキシタアゲハ(Sp. magellanus (Felder, 1862)2)[♂, ♀]
= sonani (Matsumura, 1931)4) [♂, ♀] (Taiwan (Lanyu島))
(分布)台湾 (TAIWAN): 蘭嶼 (紅頭嶼) (Lanyu); PHILIPPINES: Batan諸島(Batan島), Babuyan諸島(Calayan島, Fuga島, Camiguin島), Luzon島(Cagua山, Cagayan Peaks, Tubao, Dalisag, Maria Aurora (Baler湾地域), Wawaダム, Manila, Los Baños, Tagaytay, Santo Tomas, Labo山, Polillo諸島 (Polillo島, Jomalig島), Mindoro島(北東部), Marinduque島, Catanduanes島, Masbate島, Samar島 。[分布概念図 34], [分布図145]
(垂直分布)海抜 0 – 1,500 m。
(発見と原記載のエピソード)Semperによって採集されたバブヤン諸島のカミギン(Camiguin)島の♂と、ルソン島の♀をもとにFelder (1862)が新種として記載した。種名の由来は明らかではないが、おそらくポルトガルの航海家Ferdinand Magellan (1480?-1521)にちなんで命名されたものと思われる。
(特徴)分布域に台湾の紅頭嶼が含まれるが、主としてフィリッピンに分布する大型種。分布域が縦に長いので多少の地域変異があるが、顕著な変異は見られない。本種の♂の後翅の半透明黄金斑が斜光により幻色を発する点で、ブルキシタアゲハ (T. prattorum ) に近似する。
(斑紋)♂:前翅の翅頂は尖り、外縁は陥凹する。翅の地色は光沢がある黒色で、幅は狭いが明瞭な黄色を帯びた灰白色の翅脈条が第1-9脈まで存在するが、中室先端には微細な縁取りがあるに過ぎない。後翅も翅頂と後角が尖るが、ブルキシタアゲハ (T. prattorum ) とは黒色外縁帯は狭く、黒色山形斑も小さく、ほぼ全体を占める半透明黄金斑の蛍光色は青緑色ではなく赤紫色で、後角部付近の黒色汚斑も黒色斑点も存在しないことで異なる。裏面の斑紋や色彩は表面とほぼ同じである。頸部・側胸部には紅毛がある。腹部の上面は乳黄色で淡黄褐色の性斑がある。下面は濃黄色。
♀:前翅は黒褐色で、すべての翅脈に灰色の条斑と中室を取り囲む中室斑がある。後翅の黄色斑は矢状の黒色翅室斑点が融合してできた幅広い黒色帯と高い黒色山形斑によって翅室斑と亜外縁斑とに二分される。♂のように後翅の黄色斑に幻色は見られない。頸部・側胸部には紅毛がある。腹部の上・側面は灰白色、下面は濃い黄色と黒の斑模様を形成する。
(食草)コウシュンウマノスズクサ (Aristolochia kankauensis )、フィリピンウマノスズクサ (A. zollingeriana )、ミンダナオウマノスズクサ (A. sp. A (from Mindanao I.))、デイラサグウマノスズクサ (A. sp. B (from N. Luzon I.))3)。
*f. loc. leyteanus Okano & Okano, 1983 6) [♂, ♀]
(分布)PHILIPPINES: Leyte島 (Mt. Catmon, Baybay, Mahaplag, Hinunangan, Maasin), Panaon 島 (Caningag山), Camotes諸島(Pacijan島, Poro島)。[分布図146]
(特徴)両性ともf. loc. apoensis に酷似する。
(斑紋)(原記載より)
♂:前翅の第2脈の翅脈条が縮小する。
♀:中室斑は不明瞭で第1b脈の翅脈条が縮小する。
f. loc. apoensis Okano & Ohkura, 1978 5) [♂, ♀]
(分布)PHILIPPINES: Negros島 (北東部), Cebu島, Bohol島, Siquijor島, Camiguin島, Mindanao島 (Surigao, Mainit, Tandag, Agusan del Sur, Malitbog, San Vicente, Kitanglad山, San Miguel, Kalatungan山, Compostela, Tagubud山, Cotabato, Baguio in Davao, Apo山, Kidapawan, Matutum山, Kiamba。 [分布図146]
(発見と原記載のエピソード)ミンダナオ島産の最初の記載者はSemper (1891)と思われるが、彼は原名亜種としている。OkanoとOhkura (1978)は1977年6月、南ミンダナオ島のアポ(Apo)山で採集された♀を完模式標本とし、同地で1977年3月から6月にかけて採集された13♂♂、13♀♀; 1978年3月北ミンダナオ島で採集された1♂、1♀; 1977年5月採集の北東ミンダナオ島産の3♂♂、1♀; ボホル島の2♂♂; 1976年3月と1977年2月および12月、1978年4月にそれぞれレイテ島で採集された6♂♂、3♀♀の合計25♂♂、18♀♀の副模式標本に基づいて記載した。なお、apoensisはアポ山にちなむ。
(特徴)大型の個体が多く、腹部が黒化するのが特徴である。
(斑紋)♂:斑紋は名義タイプ亜種と変わらないが、やや大型で腹部側面の黒色斑が大きい。
♀:♂と同様に大型。腹部が黒化し、上面は黒灰色、側面の黒色斑が大きい。
f. loc. cuyonensis Deslisle, 20011) [♂, ♀]
(分布)PHILIPPINES: Linapacan島, Cuyo諸島 (Quiniluban島, Dit島, Tagauyan島, Cocoro島, Cuyo島), Dalanganem諸島 (Calandagan島)。[分布図146]
(発見と原記載のエピソード)クヨ (Cuyo)諸島のCuyo島で1992年7月に採集された記載者所蔵の10♂♂、12♀♀および大屋が所蔵するダランガネム (Dalanganem)諸島のCalandagan島で1992年と1993年に採集された3♂♂、1♀に基づきコウトウキシタアゲハ(T. magellanus)の地域変異として記載された。地域変異名は生息地Cuyo諸島に因む。
(特徴)最も西に分布する新しく記載された地域変異。両性とも前翅の翅脈条斑がよく発達すること。♂は腹部の色が、♀は胸腹部の色が淡いことが特徴である。
(斑紋)♂:前翅の中室斑と翅脈条が明瞭であることと、腹部の色が淡いことが特徴である。
♀:前翅の中室斑が基部まで幅広く広がり、すべての翅脈条斑が中室まで達する。後翅の黒色翅室斑点が大きく融合しあって帯状になる。胸部・腹部とも上面が淡い乳褐色であるのが特徴である。