14)ブルキシタアゲハ (Sp. prattorum (Joicey & Talbot, 1922)1)) [♂, ♀]
(分布)INDONESIA [Maluku] Buru島 (Leksula, Waetawa, Kayeli, Central地域)。
(垂直分布)海抜 600 – 1,600 m。
(発見と原記載のエピソード)英国のHill博物館の標本蒐集の目的で採集を続けていたPratt兄弟により、1922年4月ブル島の西部(2000~5000フィート)のジャングルで発見された1♂、3♀♀をもとに、同年JoiceyとTalbotが記載した。種名prattorumは最初の発見者であるPratt兄弟の栄誉をたたえて命名されたものである。
(特徴)本種はAeacus種群の分布上、非常に飛び離れた最南東に位置するBuru島だけに生息する大型のキシタアゲハである。翅形や斑紋の類似性だけでなく、後翅の半透明黄金斑に見られる美しい蛍光様の幻色はPhilippinesを中心に分布するコウトウキシタアゲハ (T. magellanus ) と特に深い近似関係にあることを示唆している。この輝きはコウトウキシタアゲハでは ♂ だけに見られるが、本種では両性に見られる。
(斑紋)♂:前翅は光沢がある黒色で、第2-8脈まで灰白色でわずかに黄色を帯びた狭い翅脈条と先端1/3にはM字状の中室斑がある。後翅は半透明黄金斑で占められ、斜光により美しい青緑色の幻色を放つ。表面では第2- 4室の黒色山形斑の内側には黒色汚斑(Aeacus種群に特有)と第2、3室にはそれに接して小さい黒色翅室斑点がある。裏面は表面とあまり変わらないが、前翅では翅脈条はやや幅広く明るく、後翅では黒色汚斑と黒色翅室斑点はない。頸部・側胸部には紅毛があり、腹部は黒色。
♀:大型で翅幅が広い。翅の地色は黒褐色で、灰色の翅脈条は中室先端のM字状斑を含みすべての翅脈に存在し、♂より広範囲に広がる。後翅の黄色斑および亜外縁斑は大きな暗色翅室斑点が互いに融合して形成された長く幅広い暗色帯と、高い暗色山形斑により黄色斑は縮小する。黄色斑は弱いながら♂と同色の幻色を発する。頸部・側胸部には紅毛がある。腹部裏面の先端部にある黄色い縞を除けば黒褐色。
(変異)斑紋はよく安定していて、特別な変異は見られない。
(食草)不明(タガラウマノスズクサ (Aristolochia tagala ) で飼育は可能)2)。