4)ボルネオキシタアゲハ (Sp. andromache (Staudinger, 1892)7))
Ssp. andromache (Staudinger, 1892)(名義タイプ亜種)
Ssp. nishikawai Kobayashi, 1992(西カリマンタン亜種)
f. loc. goramensis Morita, 2000(サラワク州地域変異)
Amphrysus種群の中では最も小型種の一つであるばかりではなく、キシタアゲハ(Troides )の中でも最小種の一つである。以前はKalimantan(=Borneo)の北部の高地に限局して生息すると考えられていたが、小林(1992)4)、守田(2000)6)らにより中部および南部の高地からも発見され、現在では2亜種1地方型に分類されている。本種の♀は南下するにつれ前翅が黒化するが、この現象は同島に生息するアンフリサスキシタアゲハ (T. amphrysus ) にも見られるので極めて興味ある現象である。
(分布)Kalimantan(=Borneo)島。 [分布概念図 23]
(垂直分布)海抜 300 – 1, 700 m。
(斑紋)♂:前翅はAmphrysus種群に特有な後縁が長く外縁が陥凹する。後翅は幅広く、短く、長さと幅がほぼ等しく、波状の凹凸が軽度で本種固有の形をしている。前翅は光沢がある黒色で、暗青色または深紫青色の幻色がある。後翅は短く半透明黄金色で外縁は黒色山形斑で囲まれる。前翅裏面には内方に尖った灰白色の楔状の翅室斑が6個あり、内側は僅かに黄色。頸部には紅毛があるが側胸部にはない。腹部上面は暗褐色で、黒褐色の性標があり、下面は黄色。
♀:前翅の地色は生息地により灰白色から暗褐色まで変化が見られる。北部産ほど白化する傾向がある。前翅には翅頂から内縁まで翅室の中央を縦走する地色より濃い幅広いジグザグした帯状斑とそれより濃い褐色の外縁帯がある。後翅はアンフリサスキシタアゲハ(T. amphrysus ) の亜種flavicollis に酷似していて、黄色斑は小さい。腹部の上面は暗褐色、下面は黒と黄色の縞模様。
(食草)アカエリウマノスズクサ(Aristolochia foveolata)5)。