6.亜種naias (Doherty, 1891)2) [♂,♀]
= kronos Kobayashi, 19875) [♂,♀] (Lombok島)
= antilochus (Fruhstorfer, 1913)4) [♂, ♀] (Alor島)
(分布)INDONESIA [W. Nusa Tenggara] Lombok島, Sumbawa島, [E. Nusa Tenggara] Sumba島, Solor諸島 (Flores島, Solor島 Adonara島, Lomblen島), Alor諸島, (Pantar島, Alor島))。 [分布図108]
(発見と原記載のエピソード)Doherty (1891)自身が、Sumba島およびSumbawa島で採集した標本をもとに発表した論文中に記載されたものである。それによれば、Sumba島産は独立種とし、Sumbawa島のものは♂の後翅の第3室斑が欠如することと、♀の後翅の前縁室斑が大きいことで変異sambavanaとしている。一方、Fruhstorfer (1913)によって記載されたアロル島のantilochusは、採集者やその他の詳しい記載はない。亜種名naiasはラテン語で「水の妖精」を意味し、sambavanaは生息地Sumbawa島に由来する。また、antilochusはMemnonに殺されたNestorの息子Antilochusにちなむ(ギリシャ神話)。
(特徴)本種の中では最も広く分布する亜種。そのために島ごとに多少の変化があり、以前はSumbawa島産を亜種sambavana、Alor島産を亜種antilochusとしていたが、現在ではこれらを総括して亜種naiasとして分類することが多い。
(斑紋)♂:これまでの5亜種とは異なり、前・後翅とも外縁の波状の凹凸がほとんどなく、後角が尖る。後翅の半透明黄金斑は第3翅室(微細)から亜前縁室までで、 前縁室の斑紋が最大で全体の形も丸みを帯び、下方に向って小さくなる。
♀:外縁の波状の凹凸が軽度である。前翅の中室条斑が第2脈の起始部を越えて伸びる。後翅の他亜種との違いは亜前縁室に比較的大きい黄色亜前縁室斑が存在することと、暗色翅室斑点が外側に偏在することである。後翅裏面の斑紋は他亜種のようにクリーム黄色ではなく黄色である。
(変異) ♂-f. sambavana (Doherty, 1891)2): (後翅の斑紋変異)通常亜前縁室から第3室まで5個存在する黄金斑のうち第3室のものを欠如するもの。
♀-f. sambavana (Doherty, 1891)2): (後翅の斑紋変異) 暗色翅室斑点が縮小するもの。
f. loc. socrates (Staudinger, 1891)14) [♂, ♀]
= pancasila Kobayashi, 19876) [♀] (East Timor (Dili))
(分布)INDONESIA [W. Daya諸島] Wetar (=Wetter) 島; EAST TIMOR: Dili。[分布図108]
(発見と原記載のエピソード)記載者であるStaudingerは1886年、Hauptmann HolzからWetter島産の新鮮な1♂を入手した時、haliphronの変異だと考えた。4年後の1890年、さらに1対の標本を受け取った。その上、NeumögenからDehertyがSumbawa島で採集した2♂♂(現在では亜種naiasとして分類)を入手した。彼はこれらの標本に基づいて1891年に新種として記載した。種名socratesは古代ギリシャの哲学者Socrates (469? – 399 B.C.)に因む。
(特徴)Wetar島やTimor島(♂は未知)では黒化する。
(斑紋)♂:亜種naiasと翅形や斑紋の識別はできないが、頸部や側胸部の紅毛がない(または非常に少ない)のが特徴である。
♀:亜種naiasより前翅の地色が暗く、黒褐色。♂と同様に頸部や側胸部の紅毛を欠如する個体が多い。