9)チモールキシタアゲハ (Sp. plato (Wallace, 1865)5)) [♂] [♀: (Röber, 1891)4)]
(分布)INDONESIA [East Nusa Tenggara] West Timor (Kupang, Kotabes, Camplong, Soe) ; EAST TIMOR (Dili, Raca村)。 [分布概念図 28], [分布図103]
(垂直分布)不明。
(発見と原記載のエピソード)Wallace自身がチモール島で採集した1♂に基づき、新種として1865年記載発表した。その論文中に「本種は一見すると他の幾つかの種に似ているが、非常にはっきりと区別できる種である。私はただ1♂だけを採集した。」と述べている。一方、♀はRöber (1891)によりヘリブトキシタアゲハの亜種staudingeriと比較して記載されたのが最初である。その♂♀の標本は、1887年末から1年間にわたりベルリン王立民俗博物館の資料蒐集のため同島を訪れたKühnとJacobsenにより採集されたものである。なお、種名platoはギリシャの哲学者Plato (=Platon) (427?-347? B.C.)にちなむ。
(特徴) Timor島だけに生息する特異な種で、同島には他のトリバネアゲハは生息しない。その特異性から、発見当初は独立種、その後はクリトンキシタアゲハ(T. criton )の地方型やハリフロンキシタアゲハ (T. haliphron ) の亜種と考えられたことがあった。現在では独立種として認められている。種の特徴として、両性とも前・後翅の外縁の波状の凹凸が顕著であること、前翅が他に類を見ない一部半透明であること、側胸部に紅毛がないこと、♂の生殖器が特異であること、♀が多型であることなどが列記できる。
(斑紋)♂:前翅は光沢がある黒色で、翅底部1/3は濃色。翅の周辺を除けば残りの部分は半透明淡黒色。後翅の半透明黄金斑は翅底側と外縁の黒色に囲まれ縦長になる。クリトンキシタアゲハ (T. criton )に似る。
♀:前翅の明暗によって2型に分類される。
♀-f. nychonia (Jordan, 1908)1): 前翅の翅脈条が暗色型。
♀-f. chitonia (Jordan, 1908)1): 前翅の翅脈条は明色型。
(変異)♀-f. delormei (Le Moult, 1931)2): (前翅の斑紋変異)明色型の極型。
(食草)タガラウマノスズクサ(Aristolochia tagala )3)。