8)タニンバルキシタアゲハ (Sp. riedeli (Kirsch, 1885)1) [♂, ♀]
(分布)INDONESIA [Maluku] Tanimbar (=Timorlaut)諸島 (Yamdena島 (Saumlaki), Sera島)。
(垂直分布)不明。
(発見と原記載のエピソード)Riedelがチモールラウト島で採集した標本はすべてドレスデンの王立動物博物館に寄贈され、Butler (1883)はその標本を整理して21種に分類し報告した。その後、Kirsch (1885)はさらに2種類の新種と1変異を含む4種類を追加報告したが、本種はその中の一つである。なお、種名riedeliは採集者Riedelの栄誉をたたえて命名されたものである。
(特徴)Tanimbar諸島の特産種で、Haliphron種群としては最も東に生息する。同諸島には別種のスタウディンガーキシタアゲハ (T. staudingeri ikarus ) も生息する。翅形も斑紋も特異的であるため他種との識別は容易である。個体変異は殆んど見られない。
(斑紋)♂:前翅の翅頂は著しく尖り、外縁は直線化する。後翅は卵型である。前翅は光沢がある黒色で、僅かに翅脈条斑がある。後翅では中室の先端部を少し残して、それを要に扇状に広がる半透明黄金斑が存在する。そのため6個の翅室のうち第2翅室のものが最も長く、前縁室のものが最小である。この斑紋の型は一見Sri Lanka産のセイロンキシタアゲハ(T. darsius )に似ている。前翅裏面ではかなり明瞭な灰白色の翅脈条がある。頸部、側胸部には明るい紅毛がある。腹部の上面は黒。下面は第3-8節では黄色の縁取りがある。
♀:前翅の地色は光沢がある黒褐色で、中室先端から亜翅頂部、亜外縁部へ明るい白色の幅広い翅脈条があり目立つ。後翅の黄色斑は基本的には♂と同じであるが、第3 – 5室の黄色斑だけが中室に届く。黒色翅室斑点は互いに孤立するが、個体によっては幾つかが外縁の黒色山形斑と接する。頸部、胸部の紅毛および腹部は♂と同じ。
(食草)タガラウマノスズクサ (Aristolochia tagala )2)。