3.亜種oblongomaculatus (Goeze, 1779)12)[♀][♂: helena (Clerck, 1764)2)](♀:2型)
= helena, (Clerck, 1764)2) (nec Linnaeus, 175818)) [♂] (原産地不明)
= amphimedon (Cramer, 1779)3)[♀] (Ambon島)
= asartia Rothschild, 190827) [♂] (Seramlaut島)
= osiris Ehrmann, 19257) [♂] (Ceram島)
= cyclop Rumbucher & Schäffler, 200529) [♂, ♀]( Manipa島, Indonesia)
(分布) INDONESIA [Maluku] Manipa島, Kelang島, Boano島, Seram島 (Piru, Kamarian, Amahai, Wahai, Yaputih, Manusela), Ambon島, Haruku島, Saparua島, Nusa Laut島, Geser島, Seramlaut島, Misool 島。[分布図140]
(発見と原記載のエピソード)本亜種に関してはClerck (1764)がヘレナキシタアゲハとして記載したのが最初である。その後、Goeze (1779)はSeba (1765)の♀を参考に独立種oblongomaculatusと命名記載したが、同年Cramerも同じ♀をもとにamphimedonと命名した。さて、先取権の問題であるが、Goezeはその序文に「1779年ミカエル祭(9月29日)によせて」と記していることから、その日より以前に命名したことになる。一方、Cramerの大著“Papillon Exotique”第3巻1779年)の最初の図版(第193図版)をGoezeが引用したことからすれば、CramerはGoezeが命名した以前にすでに命名したことになる。しかし、発行日はGoezeの方が先であったと考えられることから先取権はGoezeにある。なお、oblongomaculatusは「長方形(矩形)の斑紋をした」を意味する。
(特徴)トリバネアゲハの種の中では最も古くから知られた亜種である。この亜種に属する個体は大型で、特にSeram島産やAmbon島産の個体はキシタアゲハ属中の最大種である。
(斑紋)♂:前翅は両面光沢がある黒色。後翅の半透明黄金斑は大きく、とくに亜前縁室斑は亜種中最大であり、このことが重要な識別点となる。亜前縁室斑は第8脈に向って広がり第8脈に達する。中室斑も大きくほぼ全体に拡がり、第5室では第6翅脈に沿う指状突起がある。
♀:2型が存在する。後翅の斑紋の色は灰黄色か乳白色で全体に小さく、裏面ではさらに白化する。暗色翅室斑点は大きく、互いに融合し、幅広い暗色外縁帯とも融合する。
1.暗色型(♀-f. amaura (Jordan, 1908)16)): 前翅の翅脈条を欠如するもの。
2.明色型(♀-f. oblongomaculatus (Goeze, 1779)12)): 前翅の翅脈条が存在するもの。
(変異) ♂-f. linos Haugum & Low, 198213): (後翅の斑紋変異)亜前縁室に大きな、不規則な楕円形の黒色斑があり、第6室にそれより小さい黒色斑がある黒化型。
♂-f. nigropuncta Rumbucher & Schäffler, 200529): (後翅の斑紋変異)中室端に黒色斑点があり、さらに黒色外縁帯と結合した黒色翅室斑点様の斑点が第4,5室に存在する。
♂-f. melania Ohya, 198323): (後翅の斑紋変異) 黄金斑は極めて縮小し中室および第4室では欠如、第3、5翅室では線状、第6室ではV字状、亜前縁室では中央部で上下に2分される黒化型。
♂-f. rusty Rumbucher & Schäffler, 200529): (後翅の色調変異)翅室斑の色が黄色ではなくオレンジ色のもの。
♂-f. rubescini Rumbucher & Schäffler, 200529): (後翅の色調変異)翅室斑の色が部分的に赤色であるもの。
♀-f. olympicuss Rumbucher & Schäffler, 200529): (前翅の斑紋変異)明色型の極型。
♀-f. melanides Rumbucher & Schäffler, 200529): (後翅の斑紋変異)翅室斑が極端に小さい型。
♀-f. ohzuoides Ohya, 198323): (後翅の斑紋変異)亜外縁の小斑点列を除き、翅室斑を欠如する。亜種bouruensis ♀-f. ohzuiと同じ変異。
♀-f. goezei (Dufrane, 1930)6): (後翅の色調変異)後翅の斑紋の色が黄色ではなくクリーム色をしたもの。