◎研究概要
現在使用されている医薬品や農薬などには,もともと天然に存在する植物や微生物が産生する化学成分として見いだされた物質(天然有機化合物;天然物)が多く存在しています.しかし,数百万種ともいわれる天然資源のうち,天然物が探索されたものはほんの一握りに過ぎず,いまなお,新たな化学構造をもつ天然物(新規天然物)や有用な生物活性をもつ天然物(生物活性天然物)の存在が期待されています.
そこで,当研究室では,植物や微生物を研究試料として,医薬シーズや農薬シーズとなりうる天然物を探し,その機能などを明らかにする,天然物化学研究(モノトリ)を行っています.
◎研究課題
1.多彩な天然資源に基づく化学的多様性の開拓
新規天然物や生物活性天然物の探索基盤の構築を目指し,フィールドワークや共同研究を通して,植物や農産物残渣,陸上・海洋由来微生物といった天然資源を独自に収集・保存し,「天然資源コレクション」やその「抽出物コレクション」の構築・拡充を進めています.これらの資源に由来する化学的多様性を体系的に解析し,天然物探索基盤の充実を図っています.

2.微生物の潜在的生合成能を引き出す培養技術の開発
微生物のもつ,天然物の産生に関与する生合成遺伝子は,その多くが休眠状態にあることが明らかにされています.そこで,当研究室では,微生物由来の新規天然物の取得を目指し,休眠遺伝子の活性化に繋がる,様々な微生物培養法の実施・開発に取り組んでいます.このような培養法の実施・開発は,1. で示した天然資源コレクションの拡充にも繋がります.
近年,私たちは,微生物の生育環境や生物間相互作用,特に微生物を中心とした関係性に着目した培養法の検討を進め,休眠遺伝子の活性化を試みています.なかでも,病原菌の感染時における免疫動物細胞との相互作用を模倣し,動物細胞の存在下で微生物を培養する「微生物 x 動物細胞」の培養による新たな天然物探索手法を提唱し,微生物のみの単独培養では産生されない新規天然物を見出し,継続して研究を進めています .

3.創薬シーズ天然物の探索とその機能解明
天然資源コレクションについて,がんや関節リウマチなどの細胞内シグナル伝達経路や薬剤耐性感染症を標的とした多様な生物活性試験に加え,TLCやHPLCなどによる網羅的な化学分析法でスクリーニングしています.
その後,有望な天然資源抽出物から,カラムクロマトグラフィーやHPLCなどを用いて新規天然物や生物活性天然物を分離・精製し,NMRやMSを含めたスペクトル解析などによりその化学構造の決定を行っています.さらに,単離した天然物については,その機能解明や生合成遺伝子の推定等を試みています.

