研究内容


研究紹介動画:高校生のための注目の研究者・ミニ解説より
 新規天然物や生物活性天然物の探索基盤の構築を目指し,フィールドワークや共同研究を通して,植物や農産物残渣,陸上・海洋由来微生物といった天然資源を独自に収集・保存し,「天然資源コレクション」やその「抽出物コレクション」の構築・拡充を進めています.これらの資源に由来する化学的多様性を体系的に解析するとともに,天然資源やその抽出物を対象とした化学分析・生物活性評価を進めています.また,微生物については,生育環境や生物間相互作用に着目した培養法の検討を通じて,従来の培養条件では得られない天然物の探索にも取り組んでいます.こうして多様な天然資源を収集・蓄積することで,天然物探索基盤の充実を図っています.
 微生物が産生する天然物の生合成に関与する遺伝子の多くは,通常の培養条件では発現していないことが明らかにされています.そこで当研究室では,微生物由来の新規天然物の取得を目指し,こうした生合成遺伝子の活性化につながる新たな培養法の開発・実施に取り組んでいます.
 その具体的な研究の一つが,「微生物×動物細胞」の培養です.病原菌の感染時における免疫動物細胞との相互作用に着目し,動物細胞の存在下で微生物を培養することで,微生物のみの単独培養では産生されない新規天然物を見出しました(石橋 正己 博士,荒井 緑 博士らとの研究成果).この研究は,研究室主宰者が博士課程から継続して取り組んできた研究テーマの一つです.
 こうした研究を通じて得た知見をもとに,現在,当研究室では,微生物の生育環境や生物間相互作用,特に微生物を中心とした関係性に着目した培養法の検討・実施を進めています.こうした培養法により,従来の培養条件では得られない天然物の探索を進めるとともに,1. で示した天然資源コレクションの拡充にもつなげています.
 植物や微生物を基盤とした天然資源コレクションについて,TLCやHPLCなどによる化学分析と,がんや関節リウマチなどの細胞内シグナル伝達経路や薬剤耐性感染症を標的とした多様な生物活性試験を並行して行い,スクリーニングしています.生物活性評価では,現在,脂質過酸化細胞死(フェロトーシスを含む)の制御,関節リウマチ滑膜細胞の増殖抑制,および薬剤耐性真菌に対する増殖抑制などを指標とし,既存の評価系を活用するとともに新たな評価系の構築も進めています.
 こうしたスクリーニングによって得られた有望な天然資源抽出物から,カラムクロマトグラフィーやHPLCなどを用いて新規天然物や生物活性天然物を分離・精製し,NMRやMSを含めたスペクトル解析などにより化学構造を決定しています.さらに,単離した天然物については,その機能解明や生合成遺伝子の推定等を試みています.
研究の流れ