研究内容

栽培化過程の推測

ジャポニカイネはどのように「栽培化」されたのか?

日本人の主食であるお米を作るイネという植物は、約1万年前に自生していた野生イネから古代人による作物として望ましい形質に関する選抜が繰り返されてできた新しい種(Oriza sativa) です。この過程を栽培化と呼びます。そして、この栽培化に貢献した、変異した一群の遺伝子を栽培化遺伝子と呼んでいます。中でも、コシヒカリなどの日本のイネの多くはジャポニカと呼ばれる亜種に属しています。

当研究室では、これまでに、つくばにある農業生物資源研究所との共同研究により、5つの栽培化関連遺伝子(コメ粒の幅を決めるqSW5遺伝子、玄米の表面(種皮)の色を決めるRc遺伝子などを含む)の、栽培化のときに選ばれたと考えられる6つのDNA変異の有無について調べました。また、進化的に中立と考えられるDNA多型マーカーを用いて調査したゲノムワイドなDNAの多様性のパターンを約90系統のいろいろな原産地のジャポニカ(在来種と一部、近代品種を含む)で比較調査しました。

図は、古いアジアの地図と解析に用いたジャポニカイネのもみと玄米の写真を、解析した5つの栽培化遺伝子のDNA変化をイネの原産地にあわせて載せています。

今回の解析の結果、5つの栽培化遺伝子がすべて機能型(オリジナルで、選抜を受ける前
のDNA型)の品種は、東南アジア、特に、インドネシア、フィリピン原産でした。

また、1つだけが変化した品種も、東南アジア原産でした。そして、栽培化遺伝子のDNA変化が徐々に蓄積していくにつれて、その遺伝子型の品種が中国や日本に広がっていく様子が見えてきました。これらの結果は、ジャポニカの原産地が、東南アジアであることを非常に強く示唆しています。

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