研究内容

種子の脱離現象の解明

イネの種子の脱離現象の解明

日本のイネは、ほとんど脱粒しない(図A左)が、自生する野生イネの種子は登熟すると脱粒します(図A右)。この違いは、自然界では種子の拡散による繁殖戦略に重要な性質が、イネが作物になるにつれて(栽培化)、古代人により、より収量性の良いものを選抜した結果だと考えられています。また、脱粒生の程度は脱穀効率との関連が深く、今日でも重要な農業形質の1つです。これまでに、当研究室では、第一染色体に存在するイネ脱粒性遺伝子qSH1を単離、同定しています。qSH1は、種子の基部の離層形成に必須な遺伝子であり、脱粒性の有無は、遺伝子転写開始点上流の約12kbの位置に生じる一塩基多型(SNP)による組織特異的遺伝子発現の変化で決定されることを明らかにしています。

また、詳細な離層部位の形態観察から、イネの脱粒性は大きく2つのプロセス、すなわち、離層の形成と離層の崩壊といった比較的単純な形態形成・器官分化のモデル系として考えることができます。

今後は、最先端の技術であるレーザーマイクロダイセクション法により離層細胞を回収し、調整したRNAを用いたマイクロアレイ解析(LM-マイクロアレイ)を行い、 qSH1の下流の候補遺伝子の発現解析、過剰発現体の作成を行い、イネの脱粒性の分子機構を明らかにしたいと考えています。

図A. イネの種子の脱粒性、図B.イネのもみの写真、四角で囲った部分のステージ毎の縦方向の切片を図CからEに示す。
矢印は、離層部位を示す。

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