研究内容 
(植物ストレスシグナル・植物ゲノム機能解析)

キーワード

環境ストレス応答、植物分子生物学、細胞内情報伝達、 遺伝子、シロイヌナズナ、MAPキナーゼ経路、ユビキチンリガーゼ、ゲノム情報、病害抵抗性

 農産物の安定した供給は、我々が社会生活を営む上での最重要事項です。植物は我々に食料を、家畜には飼料を供給するだけでなく、建材、繊維、紙、装飾に至るまで深く関わっています。我々ヒトを含めた動物は、植物が作り出す様々な物質を、直接または、間接的に利用することで生きています。言わば我々は、植物によって養われている訳です。
 植物の生育に多大な影響を与える要因の一つが、病害も含めた環境ストレスです。環境ストレスとは、植物の生育環境が、至適範囲から外れ、阻害的な状態になることです。一方、植物は環境ストレスにただ曝されるだけでなく、それに適応・抵抗しようと、植物ホルモンを動員しつつ、遺伝子発現や代謝を、ストレスモードに切り替えます(図1)。その環境ストレス応答に関わる情報伝達の仕組みを、分子生物学的に明らかにし、環境ストレスに強い植物を作るための基礎研究を、当研究室では行っています。



 当研究室では、実験材料にモデル植物のシロイヌナズナ(図2)を、主に使って研究を行います。シロイヌナズナは図2にあるような、モデル植物として優れた特徴を有しています。また、植物でいち早くゲノム塩基配列が決定されたため、ゲノム情報を有効に活用できる、様々な研究ツール、リソースが充実しています。研究室メンバーは、これらを効率よく活用して、研究を進めるスキルを身につける事ができます。実験材料は、必要に応じてベンサミアナタバコ(図3)も使用します。



 当研究室は、植物の環境ストレス情報伝達機構を明らかにするため、MAPキナーゼ経路を切り口として研究を行っています。MAPキナーゼ経路は、3種類のプロテインキナーゼがリン酸化を介して連鎖的に活性化することで、細胞外刺激を認識した受容体からの情報を、核や細胞質へ伝達します(図4)。MAPキナーゼ経路はヒトから植物、酵母まで、進化的に保存されており、様々な細胞外刺激の細胞内情報伝達を担うモジュールとして機能しています。



 植物MAPキナーゼは、これら環境ストレスや感染刺激によって数分以内に活性化すること、また、変異体の表現型解析などから、情報伝達の初期過程で機能すると考えられています(図5)。当研究室は、環境ストレスに関与するMAPキナーゼ経路自体、およびその上下で機能する情報伝達機構を分子レベルで解明することで、環境応答システムの理解を目指しています。

卒論・修論・博論のテーマ

  • シロイヌナズナMEKK1変異体表現型を抑制する遺伝子の同定
  • シロイヌナズナMEKK1に結合するユビキチンリガーゼの役割
  • タンパク質相互作用に基づいた新規MAPキナーゼ経路の同定
  • MAPキナーゼ経路が誘導する細胞死の分子機構
  • 植物病原菌エフェクターを用いた新たな植物免疫シグナル伝達機構の同定