香川大学農学部

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基礎研究                   
粘液細菌の情報伝達機構


粘液細菌は土壌中に生息するグラム陰性細菌で、10万個以上の粘液細菌が集団で社会的な行動をとり、他の微生物などを死滅・分解して栄養を摂取しています。粘液細菌は他の微生物などが見つからず、栄養がない飢餓状態になると1か所に集合し、胞子で満たされた子実体を形成します。下の写真は、簡単な子実体を作る粘液細菌の子実体の例を示していますが、なかには木に果実がなっているような複雑な子実体を形成するものもあります。


上(左の写真)と横(右の写真)から見た粘液細菌の子実体 

 粘液細菌は集団で行動するために優れたコミュニケーション(情報伝達機構)能力を有しており、これは主にタンパク質のリン酸化を介して行われます。これは生物に共通してみられますが、従来、原核生物の細菌と真核生物では大きく異なるとされてきました。
 私達は現在、粘液細菌のタンパク質をリン酸化するキナーゼと脱リン酸化するホスファターゼのなかから哺乳動物で重要な役割を有するとされているチロシン残基をリン酸化・脱リン酸化する酵素を対象に研究をしています。
 細菌の周りは莢膜と呼ばれる多糖で被われており、動物細胞への感染、宿主の免疫機構からの逃避や宿主でのバイオフィルムの形成による増殖、細菌毒素などの働きを有しています。これら菌体外多糖の合成には、細菌型チロシンキナーゼが関与しています。また、細菌ではほとんど報告例のない真核生物様チロシンキナーゼの研究を行っており、細菌における情報伝達機構の全体像を明らかにするとともに、情報伝達機構の進化を明らかにすることを目的として研究をしています。
 

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微生物生理学研究室
木村義雄

Microbial Physiology Lab.
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Science.微生物生理学研究室

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