香川大学農学部
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粘液細菌
粘液細菌は土壌に広く生息するグラム陰性細菌で、他の微生物やセルロースなどの高分子体を分解して、栄養源にしています。他の微生物を栄養源にするには、最初に抗生物質などを分泌して、微生物を死滅させていると考えられています。また、他の微生物を分解して栄養源にするには、単独行動では不可能で10万個以上の細菌による集団で行動する必要があり、オオカミの群れとか土壌中のそうじ屋とも呼ばれています。一方、土壌中を移動して微生物などの栄養源が見つからない場合、一か所に集合して、約90%の細胞はオートリシス(自己溶菌)を起こして、10%の胞子になる細胞のために栄養源となったり、胞子の熱や乾燥などの耐性を増加させるためのコーティングタンパク質を供給すると考えられています。
このように粘液細菌は細菌のなかで最も複雑な生活環を有し、これを遂行するために複雑なコミュニケーション能力を有していると考えられています。コミュニケーションは主にタンパク質のリン酸化・脱リン酸化によって遂行されており、粘液細菌では1000遺伝子あたりに占めるタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)遺伝子の数は哺乳動物より多いとされています。
また、現在、約2000種程度の細菌のゲノム解析がなされており、細菌のなかで粘液細菌が最も多くの遺伝子(7,000-10,000程度)を有しているとされています。細菌が増殖だけに必要な遺伝子はせいぜい700程度といわれ、粘液細菌はその10倍以上の遺伝子を有することから多様な2次代謝産物を生産する能力を有していると考えられます。これは我々にとって有用な新規生理活性物質を提供してくれる可能性を示し、実際にアメリカでは粘液細菌から分離された乳がんなどに効く抗がん剤が使用されています。
私達は、このような複雑な情報伝達機構と多種多様な代謝産物の生産能力を有する粘液細菌を対象として、基礎研究と応用研究を行っています。
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