希少糖について

研究紹介~糖と希少糖の研究について~

私たちの研究室では、微生物および微生物の生産する酵素を用いた未利用資源の有効利用および希少糖の生産に関する研究を進めています。ここでは、糖と希少糖の研究について紹介します。

 

糖とは?

私たちの研究対象である糖は、生物が生きていくために欠かせない三大栄養素のうち、炭水化物に該当します。炭水化物のうち人の消化管で消化されないものを食物繊維と呼び、最近は、様々な健康食品に利用されています。一方、人の消化管で消化・吸収されないものを糖質と呼び、従来は生物のエネルギー源に過ぎない物質と認識されていました。

 

 

糖の種類

糖質は、すべて糖の最小単位である単糖から構成されており、この単糖(ブドウ糖、果糖など)が、2分子結合した二糖(砂糖、麦芽糖、乳糖など)、3分子以上結合したオリゴ糖(ラフィノース、フラクトオリゴ糖、デキストリンなど)、でんぷんなど単糖が多数結合した多糖、単糖を水素添加して得られる糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)などがあります。

 

 

単糖と希少糖

単糖は、最もシンプルな構造を持つ糖で、炭素数の違いにより四炭糖、五炭糖、六炭糖などがあります。それぞれの炭糖内では互いに異性体の関係にあり、水酸基の向きが違うだけです。これらの単糖の中で、天然に単独で存在するのはブドウ糖と果糖だけであり、構成糖を含めても7種類にすぎません。そのほかの約50種類の単糖はその存在量がとても少なく、希少糖と呼ばれています。

 

 

糖の役割

古来から糖は重要な食品素材であり、栄養や甘みの付与だけでなく、食品に粘弾性や色調、フレーバーを与えることが分かっている一方、その生体調節機構については詳しく研究が行われていませんでした。近年、二糖やオリゴ糖の大量生産技術が開発されたことにより、例えば、母乳に多く含まれるミルクオリゴ糖の、整腸作用、あかちゃんの免疫力を高める作用、骨を強くする作用、乾燥地帯の植物や昆虫が持つトレハロースの、保湿作用、防腐作用など、様々な機能性が明らかとなりました。この20年間では、私たちの研究により希少糖の生産技術が確立でき、単糖にも様々な機能性を持つものがあることが明らかになってきました。たとえば、D-プシコースには、脂質代謝調節作用、血糖値上昇抑制作用、D-アロースには、抗酸化作用といった機能性が明らかとなっています。

 

 

 

希少糖の生産

私たちの研究により、1994年に世界で初めて希少糖D-プシコースの大量生産が可能になりました。これは、香川県の土壌からD-タガトース3-エピメラーゼという初めてのケトースの炭素第3位をエピマー化する酵素を生産する微生物が発見されたから可能となった生産技術です。現在では、香川大学の希少糖生産ステーションにおいて、D-アロースをはじめとする様々な希少糖の生産が可能となっています。

 

 

希少糖の利用

希少糖のD-プシコースなどを10%程度含有する希少糖含有シロップが実用化されました。一般に入手できるようになったことで、様々な商品に使用され、全国的に販売されるようになっています。