多田邦尚教授(瀬戸内圏研究センター長)が日仏海洋学会賞を受賞

【農学部広報担当】

 平成29年6月10日(土)、多田邦尚教授(瀬戸内圏研究センター長)が、「沿岸海域の低次生物生産過程と生元素循環に関する研究」で日仏海洋学会賞を受賞しました。
 日仏海洋学会は、日仏会館の傘下にある26の関連学会(うち理工系8学会)の一つで、日・仏両国の海洋や水産に関係する分野の科学の協力を促進することを目的として設立されたもので、この受賞は多田教授が46人目となります。
 多田教授は、国内の代表的な閉鎖性海域である瀬戸内海において研究を展開してきました。まず、海洋食物連鎖の出発点である植物プランクトンの一次生産量(光合成量)の測定を瀬戸内海の全域で実施しました。この成果は、我が国の沿岸海域が有する一次生産性の指標として、今も当該分野に関わる多くの研究者に引用されています。また、大型珪藻(Coscinodiscus wailesii)や夜光虫(Noctiluca scintillans)といった、時として沿岸海域で極めて大きな生物量を占めるプランクトンについて、長年に渡って生物量の増減過程とその化学成分を測定し、これらの生物を巡る生元素(炭素・窒素・ケイ素など)の動きを明らかにしました。さらに、海底泥の有機物含量や底泥からの栄養塩の溶出についても研究し、高度経済成長期以降きれいになった瀬戸内海の環境変遷を知る上で極めて重要なデータセットを提供しています。これらの研究成果は、国内の沿岸海域に関わる多くの研究者に引用されています。
 近年では、沿岸海洋学研究を幅広く続ける一方で、魚類養殖場の環境劣化や、瀬戸内海を中心に大きな問題となっている栄養塩濃度の低下、これを原因とする養殖海苔の色落ちなどにも積極的に取り組み、科学的な研究成果をあげると共にその対応策を提言しています。
 以上のようなフィールド観測に基づいた幅広い沿岸海洋研究を精力的に展開し、数多くの研究成果をあげ続けてきた功績が高く評価されました。
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