キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す-岡山大・香川大等の国際共同研究-

【農学部広報担当】

 岡山大学・学術研究院・環境生命科学学域・赤木剛士(研究教授、JSTさきがけ研究者兼任)および香川大学・農学部・別府賢治(教授)、片岡郁雄(理事・副学長)らの共同研究グループは、さまざまなキウイフルーツの類縁種の全ゲノム情報の解読により、キウイフルーツは進化の中で何度も「新しいY染色体」を生み出したことを発見し、「Y染色体はオスに有利な状況を作るよう進化する」という、定説を覆す新説を提唱しました。本研究は、香川大学農学部の全国有数規模の自生種遺伝資源リポジトリを活用して行われました。

<研究成果の概要>

 「性別」は性染色体によって決定しており、例えば私たちヒトを含む哺乳類ではY染色体を持つものがオスになります。Y染色体は対となるX染色体と全く異なる構造をしており、これは「オスらしさ」を作り出すようY染色体が進化するためであるというのが従来の定説でした。一方、植物も哺乳類と同様にXY型の性別を持つ種が多く、100年前に植物で初めてのY染色体が発見されましたが、その進化過程は長年謎に包まれていました。

 この度、赤木 研究教授らの研究グループは、さまざまなキウイフルーツの全ゲノム配列を解読し、進化の過程でキウイフルーツが何度も新しいY染色体を重複して生み出しており、これには従来の定説を覆す新しい進化メカニズムが関与している可能性があることを提唱しました。キウイフルーツのオスは花が多い・花が早く咲くといった「オスらしさ(オスに有利な特徴)」を持っていますが、この特徴が従来の説のようにY染色体が作られる過程で生み出されたものではなく、性別決定遺伝子そのものが本来持つ機能であることを明らかにしました。これは、植物における性染色体の進化過程やその役割を世界で初めて明らかにしたものであると同時に、作物の性表現に関わる重要な知見として、食物の安定的生産や新しい育種を可能にする技術に発展していくことが期待できます。 本研究成果は、日本時間3月7日(英国時間:3月6日)、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されました。本研究は、岡山大学、香川大学農学部、かずさDNA研究所、ニュージーランド Plant & Food Research研究所、カリフォルニア大学 デービス校、エディンバラ大学との共同研究として行われました。

<論文タイトルと著者>

タイトル:Recurrent neo-sex chromosome evolution in kiwifruit

著者:Takashi Akagi, Erika Varkonyi-Gasic, Kenta Shirasawa, Andrew Catanach, Isabelle M. Henry, Daniel Mertten, Paul Datson,Kanae Masuda, Naoko Fujita, Eriko Kuwada, Koichiro Ushijima, Kenji Beppu, Andrew C. Allan, Deborah Charlesworth & Ikuo Kataoka 掲載誌:Nature Plants DOI:doi.org/10.1038/s41477-023-01361-9

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