アンチエイジング効果の可能性

 私達はC. elegans(シーエレガンス)という名前の線虫を使って、希少糖のアンチエイジング(寿命延長・抗老化)効果について研究しています。この線虫は体長約1mmのミミズのような形をした生物で、大腸菌をエサにして簡単に飼育ができるため,世界中で実験動物として使われています(図1)。マウスやラットの寿命が年単位であるのに比べて、線虫の寿命は約30日であるため、老化や寿命の研究では、より早く結果を出せるメリットがあります。私達は、希少糖D-プシコースが、この線虫の寿命を約20%延ばすことを発見しました(図2)。
 ところで、なぜD-プシコースは線虫の寿命を延ばすのでしょうか?数年前にアメリカのグループが「餌のカロリーを30%制限して飼育したサルは,自由に摂食させたサルに比べて、老化スピードが遅くなり、寿命が延長する」という報告をしました。原因ははっきりとは分っていないのですが、カロリー制限によって体内がエネルギー不足の状態になると、細胞はそれをストレスとして感じて、体を守るいろいろな防御反応のスイッチが入り、その結果、寿命が延びると考えられています。
 D-プシコースは、代謝されてカロリーになる果糖(D-フルクトース)に化学構造がよく似ていますが、代謝されず、ほぼカロリーゼロです。私達は、D-プシコースが線虫の体内に入ると、まるでカロリー制限しているような状態になり、その結果、寿命が延びると考えました。現在、当研究室では、希少糖を与えた線虫の体内でどんな反応が起こっているのかを詳細に調査しています。線虫での実験結果を一気に人間に当てはめる訳にはいきませんが、この成果によってカロリー制限の抗老化メカニズムが明らかになり、希少糖を用いたアンチエイジング食品の開発につながるかもしれません。