第14回公開セミナー, December 5, 2019.

演題 「自業自得? 高濃度エタノールストレスと酵母の生存戦略」

講師 井沢 真吾京都工芸繊維大学・准教授

要旨 出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeはオートファジーの発見など基礎研究分野で大きな貢献をするだけでなく、パンや酒造りなどの発酵産業においても重要な役割を担う、人間にとって最も有用な微生物の一つである。パスツール以来、酵母が糖からエタノールを作るアルコール発酵のメカニズムについては長い研究の歴史と膨大な知見の蓄積がある一方で、作り出したエタノールが酵母自身にどのように作用するかという点は未だによくわかっていない。演者らは、自分の人生と重ね合わせて酵母のストレス応答について研究を行ってきた。その結果、自らが招いた高濃度エタノールストレス下で、タンパク質の変性や細胞骨格の破綻、翻訳活性の抑制などに抗いながら、mRNA fluxをなんとかやりくりして懸命に生き残ろうとする健気な酵母の姿が明らかになってきた。本セミナーでは、エタノールによる翻訳抑制下の酵母の生存戦略について紹介し、基礎と応用の点から考察したいと考えている。

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