AmberTools17が4/17にリリースされていました(Amber本体は16のまま).関心のある変更点はLipid17力場の導入です.前バージョン (Lipid14) ではhead groupがPCとPEの2種類しか使用できなかったのが,
- Phosphatidylcholine (PC)
- Phosphatidylethanolamine (PE)
- Phosphatidylserine (PS)
- Phosphatidylglycerol (PGR)
- Phosphaditic acid (PH-)
の5種類になりました.側鎖も5種類から7種類に増え(アラキドン酸〔AR〕とドコサヘキサエン酸〔DHA〕が追加された),その他の脂質としてcholesterolも使用可能になりました.
これで,Amber力場と組み合わせてPSを含む脂質二重膜のtensionlessシミュレーション(表面張力をかけなくてもよい)が可能になりました.
低分子用力場に関してはまだGAFF2が開発途上のようです.少なくともうちで興味のあるマクロラクトンではGAFF力場よりもCharmmのCGenFFの方がコンホメーションやエネルギーの再現度がよい(DFTとよく一致する)ので,GAFF2の進化に期待します.
アップグレード
AmberTools16をインストール済みなので,ウェブサイトの指示通りにコマンドラインからpatchをダウンロードしました.
$ cd $AMBERHOME
$ ./update_amber --upgrade
必要なファイルがダウンロードされ,古いファイルが削除されました.次に指示通り,configureを実行しました.
$ ./configure gnu
We highly recommend to let AMBER install Python with all prerequisites inside /opt/amber16 via a Continuum Miniconda distribution.
と言われたので,yを選択するとAmber専用のpython環境が自動的に構築されました.Configureは程なく終了したので,次にcompileを実行しました(GCCのバージョンはHomebrewでインストールした6.3.0).
$ make install
cp: /opt/amber16/bin/FEW.pl and /opt/amber16/AmberTools/src/FEW/FEW.pl are identical (not copied).
と言われてエラーで途中で止まったので,そのファイルをrenameしてから,make installを再開しました.問題なく終了しました.
(了)