学部長からのあいさつ

香川大学 農学部

学部長 秋光和也

 香川大学農学部・農学研究科のホームページにお越し頂き有難うございます。農学部・農学研究科は、「応用生命」「生物生産」「環境科学」「資源化学」「食品科学」などの多彩な分野を網羅的に学ぶことが出来る「総合科学の学びの場」と言えます。様々な学部の中で、科学的な生命現象の解明に基づき、人と自然の融合を目指しながら、「食糧」・「環境」・「生命科学」という現代の大きな課題に正面から取り組む学部が「農学部」です。

 香川大学農学部は、その前身の設立から数えると120年近く、この香川の地より地域の要望に答えつつ世界に向けた研究活動を発信し、国内外との協働による実践力を強化する教育を進め、社会で役に立つ優秀な人材を輩出し続けています。当学部は明治36年(1903年)木田郡立乙種農学校の設立で産声を上げ,現在の農学部の所在地である三木町池戸の大宮八幡宮恵徳院の一隅を校舎として借用し、開校時の定員は200名であったと記されています。明治39年(1906年)に香川県立農林学校へ移管、大正11年(1922年)、昭和25年(1950年)にそれぞれ改称後、昭和30年(1955年)施行の国立学校設置法の一部改正に伴い、前身を継承する形で香川大学農学部として設置されました。

 
 この長い歴史の中から、ここでは近年の農学部・農学研究科の強みをいくつか紹介させて頂きます。農学部・農学研究科では、基礎研究の成果を実験室にのみ留めることなく、粘り強く実用化に導くという特徴があります。香川大学ブランドのワイン“ソヴァジョーヌ・サヴルーズ”は、農学部で亜熱帯の奄美諸島や琉球諸島に分布するリュウキュウガネブと高級ブドウのマスカット・オブ・アレキサンドリアを交配して育成した新品種ぶどうの“香大農R-1”を全量使用しています。地元のワイナリーで発酵醸造した赤ワインで、近年では年間約7000本が安定的に醸造販売されています。通常のワインと比べてポリフェノールが2~3倍多く、 ワイングラスに色が残るほど強い赤をもつ人気のワインとして育ちました。一般に長期研究が必要とされる品種改良に取り組んだもう一つの研究例として、次に“さぬきキウイっこ®”を紹介します。キウイフルーツは1970年代に我が国に導入され、香川県では導入直後から積極的に品種改良が進められました。この取り組み中で、香川大学農学部と香川県は、病気に強く、食味のよい品種の開発を目指し、日本の温暖な地域に自生するシマサルナシと食味のよいキウイフルーツを交配して、新品種“さぬきキウイっこ®”が生まれました。 “さぬきキウイっこ®”は、小型で一口サイズのため、指で半分に割って果肉を押し出すと、ゼリーのように簡単に食べることができ、糖度が高く酸味とのバランスが良く、イガイガ感につながるタンパク質分解酵素の活性が極めて低いため、平成26年に品種登録されて以来、年々市場での人気が上がっています。

 香川県は、古来讃岐三白といわれる砂糖,綿,塩の代表的な産地でした。三白に続く讃岐の四白として「希少糖」が農学部で開発されました。希少糖は「自然界に微量にしか存在しない単糖と誘導体」と香川大学に本部がある国際希少糖学会で定義されています。このように少量にしか存在しない単糖の研究を進めるには、まず大量に生産することが必要です。当学部の何森 健(いずもり けん)名誉教授らは、農学部のキャンパスから分離した微生物の持つ新酵素が、果糖から希少糖のD-アルロース(=D-プシコース)を作ることを発見し、さらに研究は進められ、希少糖を含む全単糖の生産戦略図である「イズモリング」の構築により、約50種類ある全ての希少糖とそれらの誘導体の生産が始まったのです。この「希少糖」という言葉も、何森名誉教授がご自身の研究を説明するために作った造語として生まれた言葉ですが、2018年には広辞苑に掲載され、広く社会に知られる言葉として認められるようになりました。新酵素の発見から四半世紀を経た今日、数多くの学術知見から産業への活用にも道が拓かれ、2014年の希少糖含有シロップ発売以来、食品では延べ3000品目以上に利用されています。グローバル展開を見据えて2019年に竣工した世界初の希少糖専用メキシコ工場で大量生産されたD-アルロース(=D-プシコース)が、北米や日本国内で順調に販売され始め、国内外から大きく注目される存在となりました。国際競争が激化する中で、農学部の一研究室から開始された希少糖研究に香川大学全学部から70名以上の教授陣が参画して、生産研究とともに様々な研究分野で用途開発が推進されるようになり、大学研究を牽引する大きなエンジンとなっています。

 国際化の芽は希少糖研究にとどまることなく、様々な研究教育分野でも広がっています。農学部・農学研究科は世界各国の大学と協定を締結し、留学生の受入、日本人学生の派遣、研究者の相互交流などを活発に行っています。感性が高い若い時期に異文化に触れることは大変重要な経験であり、文化や言葉が違っても同じような悩みや喜びを分かち合えることを早く学び、国際社会の一員として卒業生が貢献できるように、学部・大学院ともに様々な国際教育を用意しています。特に、食品分野における民間企業との連携による留学生の受入プログラムや、国内外の大学とのコンソーシアム方式による学生の相互派遣など,全国でも珍しい様々な先進的国際教育プログラムを実践しています。

 香川大学農学部・農学研究科の特色として、ワインぶどうの新品種やキウイフルーツの新品種の育成、世界に広がる希少糖研究、先進的な国際教育を紹介しましたが、それ以外にもたくさんの研究・教育の引き出しを持っています。農学部・農学研究科の穏やかで明るい学生・教員・事務職員が一体となった様子を是非一度見に来てください。入学を希望される皆さんや保護者の皆様,国際・地域社会・関係企業の皆様に納得頂ける学び舎として、120年の歴史とともに脈々と流れる我々のスピリッツを感じて頂けると思います。

 新しい道を粘り強く切り拓く香川大学農学部・農学研究科へどうぞお越し下さい。