希少糖研究 アグリバイオ

 自然界における単糖の役割は主にエネルギー源と考えられ、各生物におけるブドウ糖(D-グルコース)や果糖(D-フルクトース)の代謝によるエネルギー利用研究や、これらの単糖の光合成による生産研究が中心的な単糖研究として進められ、その役割はすでにほぼ解明されたと考えられてきました。しかしながら、自然界に存在量の少ない単糖である希少糖に関する研究は始まったばかりで、希少糖は各生物に様々な作用を示すことが明らかになってきました。   
 エネルギー源として代謝・利用できないD-アロースやD-アルロース(=D-プシコース)のような希少糖は植物に特徴的な作用を及ぼすことが分かってきました。D-アロースとD-アルロースの植物に対する作用として、一過的な生長抑制作用と耐病性誘導作用があげられます。例えば、イネやシロイヌナズナ等の幼苗根から希少糖溶液を吸わせたり、葉に噴霧処理したりすると、一過的な生長抑制がみられます(図1参照)。イネを用いたこの生長抑制のメカニズムの研究により、希少糖は生長を制御する植物ホルモンであるジベレリン生産の増減に影響するのではなく、制御因子SLR1より下流のジベレリンシグナル伝達経路の遺伝子発現が一過的に抑制されて生育が抑制されることが明らかになりました。
 希少糖の植物に対するもう一つの作用に、耐病性誘導作用があげられます。生長抑制作用と同様に、D-アロースやD-アルロースを根から吸収させたり葉に噴霧処理したりすると、活性酸素種の蓄積・耐病性関連PR遺伝子群の発現・擬似病斑(lesion mimic)形成・過敏感反応が誘導され、これらのシグナル伝達経路を経て植物病原菌への耐病性が誘導されます(図2参照)。
 これら一過的生長抑制や耐病性誘導には、希少糖の6位の炭素のリン酸化が不可欠であり、アルドースであるD-アロースのリン酸化は植物細胞中のへキソキナーゼ(HXK)が触媒することが明らかになりました(図2参照)。
 作物生産・保護面で農業資材として希少糖が応用可能になりつつあり、希少糖が誘導する作用のメカニズムの解明に向けた基礎研究と応用研究を両輪として、香川大学農学部では様々な角度からの研究が推進中です。
参考文献:Planta 234: 1083- (2011)、 Planta 237: 1379- (2013)、 Phytopathology 100: 85- (2010)、 J。 Plant Physiol。 168: 1852- (2011)、 J。 Exp。 Bot。 64: 4939- (2013)、 日本農薬学会誌 42: 99- (2017)。