ウサギの栄養生理

消化管内容物平均滞留時間

動物の栄養生理について調べる手法の一つに、消化管内容物平均滞留時間の測定があります。

平均滞留時間(MRT)は摂取した食餌が消化管内にどの程度とどまるかを示しますが、摂取した食餌の成分や粒子サイズといった物性などの影響を受けるため、それぞれの動物にあった食餌を設計する上でもMRTを把握することは重要となります。MRTの測定方法は様々ありますが、その一例を紹介します。

MRTの測定のためには消化管内容物とほぼ同じ動きをするマーカーを用います。下図はマーカーをヌートリアとウサギに給餌し経時的に糞を集めMRTを測定したものです。

上図の指数近似式(y=a*e^b*x)の係数bの逆数が発酵槽(ウサギの場合は盲腸)に消化管内容物が滞留する時間となります。

ヌートリアでは固相も液相も1÷0.03=33時間でほぼ同様ですが、ウサギの場合、固相は1÷0.045=25時間で、液相は1÷0.015=67時間となり、固相と液相の滞留時間が異なることが分かります。

結腸分離機構(Colonic Separation Mechanism)

草食動物の食餌はそのままでは消化吸収できない繊維質を多く含むため、これらの繊維質を分解し吸収可能な物質に変換してくれる微生物を消化管の一部を膨らませ住まわせています。草食動物の中でも、この膨らんだ部位(発酵槽)が胃の前にあり、反芻を行う動物を反芻動物と呼び、大腸部分(盲腸や結腸)に発酵槽がある動物を後腸発酵型動物と呼びます。

後腸発酵型動物のうち、ウサギや齧歯類などの小型の動物は盲腸が発酵槽であり、微生物を盲腸に留める仕組みが結腸部位に備わっています。この仕組は結腸分離機構(Colonic Separation Mechanism:CSM)と呼ばれています。

見た目が似ているウサギや齧歯類ですが、CSMは異なっており、上図のように齧歯類(ネズミやモルモット、ヌートリアなど)は微生物を含む液相と不溶性繊維を含む固相を分離する能力は低いですが、ウサギは液相と固相の分離能力が高いため、盲腸内に微生物を繊維質よりも長く留めることができます。

組織学的な違い

多くの動物の小腸(回腸)にはパイエル盤という免疫に関係する場所が存在します。しかしながら、ウサギの回腸にはパイエル盤が存在しない代わりに盲腸の先端部の虫垂に存在しています。

動物栄養学研究室では、上述のCSMに加え、ウサギの消化管の構造や仕組みの解明にも取り組んでいます。

ブタの回腸

ウサギの虫垂